人事システムの要件定義は、欲しい機能を並べるだけの作業ではありません。導入目的と現行業務を整理したうえで、導入後の業務、対象範囲、機能、データ、権限、連携、セキュリティ、運用条件を定め、関係者間で合意する工程です。
要件定義が曖昧なまま製品選定を始めると、各システムを同じ基準で比較できません。導入後に必要な機能やデータが不足していることに気づき、追加費用や運用上の手間が生じる可能性もあります。
本記事では、人事システム特有の確認事項を踏まえ、要件定義の進め方を7つのステップで解説します。要件定義書に記載する項目や、要件を整理する際のチェックポイントも紹介します。
人事システムの要件定義とは、導入目的と実現条件を関係者で合意する工程
要件定義とは、システムを導入して実現したいことや、システムに求める条件を具体化し、関係者間で合意する工程です。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、要件定義における要求を「ビジネス要求」と「システム化要求」に分類しています。ビジネス要求とシステム化要求を文書化・仕様化し、関係者が合意したものが「要件」です。
人事システムの場合、次のような内容を整理します。
- どの人事課題を解決するのか
- どの業務をシステム化するのか
- 誰がシステムを利用するのか
- どの従業員情報を管理するのか
- 誰がどの情報を閲覧・編集できるようにするのか
- 給与・勤怠などの周辺システムとどう連携するのか
- 既存データをどこまで移行するのか
- どのようなセキュリティや運用体制が必要か
- どの条件を満たせば導入可能と判断するのか
要件定義は、ベンダーにすべて任せる作業ではありません。システムに詳しいベンダーから支援を受けることはできますが、自社の業務と必要条件を最終的に判断するのは導入企業です。
要求定義・要件定義・RFPの違い
要求定義、要件定義、RFPは、いずれもシステム導入の初期段階で使われますが、役割が異なります。
| 項目 | 主な役割 | 内容の例 |
|---|---|---|
| 要求の整理 | 関係者の希望や課題を集める | 人事情報の更新漏れを減らしたい、過去の所属情報を確認したい |
| 要件定義 | 実現する条件を具体化して合意する | 基準日を指定して過去の所属情報を検索できること |
| RFP(提案依頼書) | 候補ベンダーへ条件を伝えて提案を依頼する | 導入目的、対象範囲、要件一覧、予算、スケジュール、提案事項 |
現場から集めた希望を、そのまま要件として扱うことはできません。必要性、対象者、実現方法、優先度、費用などを検討し、関係者が合意できる条件へ変換する必要があります。
RFPは、確定した要件などを候補ベンダーに伝えるための文書です。一般的には、要件を整理してから作成します。
クラウド型人事システムでも要件定義は必要
既製のクラウド型人事システムを導入する場合も、要件定義は必要です。
ただし、個別開発とクラウドサービスでは、要件定義の重点が異なります。クラウドサービスでは、自社の希望どおりにすべてを開発するのではなく、主に次の点を確認します。
- 必須要件を標準機能で満たせるか
- オプション契約が必要な機能は何か
- 設定変更で対応できるか
- 既存の業務を変更すれば対応できるか
- CSVなどによるデータ連携が可能か
- 個別対応が必要か
- 対応できない要件を代替運用で補えるか
- 導入後の設定・更新を誰が担当するか
標準機能に自社の業務を合わせる場合は、導入後の業務フローも同時に設計します。「現在と同じ業務をそのまま再現する」ことを前提にすると、不要なカスタマイズや二重管理が残る可能性があるためです。
人事システムの要件定義は7つのステップで進める
人事システムの要件定義は、次の順序で進めます。
- 導入目的と達成目標を明確にする
- 現行業務・システム・データを棚卸しする
- 導入後の業務とシステム化の対象範囲を決める
- 機能・データ・非機能要件を整理する
- 要件に優先順位と受入条件を付ける
- 候補システムの標準機能と照合する
- 関係部門でレビューし、責任者が承認する
いきなり機能一覧を作るのではなく、「なぜ導入するのか」「どの業務をどう変えるのか」から検討することが重要です。
1.導入目的と達成目標を明確にする
最初に、人事システムを導入する目的と、導入によって達成したい状態を整理します。
目的が曖昧だと、各部門から出た要望を採用するか判断できません。候補システムを比較する際も、機能数や価格だけで選びやすくなります。
例えば、次のように課題と目的を対応させます。
| 現状の課題 | 導入目的 | 達成したい状態 |
| 従業員情報が複数のExcelに分散している | 人事情報を一元管理する | 正本となるデータと更新責任者が決まっている |
| 異動のたびに複数の台帳を更新している | 転記作業を減らす | 一度更新した所属情報を必要な業務で利用できる |
| 過去の所属や役職を調べるのに時間がかかる | 履歴を検索できるようにする | 基準日を指定して過去の組織・所属情報を確認できる |
| 評価シートの配布・回収状況を把握しにくい | 評価業務を効率化する | 評価の進捗状況を一元的に確認できる |
| 申請内容を人事担当者が転記している | 申請と情報更新をつなげる | 承認済みの情報を所定の手順で人事データに反映できる |
目標には、可能な範囲で確認可能な基準を設けます。ただし、根拠のない削減率を先に設定する必要はありません。現在の作業件数や所要時間を測定し、それを基準に現実的な目標を決めましょう。
2.現行業務・システム・データを棚卸しする
次に、現在の業務、使用しているシステム、管理データを整理します。現状を把握せずに導入後の業務を決めると、必要な例外処理やデータ連携を見落としやすくなります。
業務の棚卸しでは、少なくとも次の項目を確認します。
- 対象業務
- 実施する時期・頻度
- 担当部門・担当者
- 承認者
- 使用する帳票・Excel・システム
- 入力する情報
- 出力・参照する情報
- 前後の業務
- 繁忙期の処理件数
- 手作業や転記の有無
- ミスや遅延が起きやすい箇所
- 通常と異なる例外処理
例えば、入社手続きであれば、内定者から情報を受け取る方法、人事担当者が入力する項目、社員番号を発行する時期、給与・勤怠システムへ登録する方法まで確認します。
データの棚卸しでは、次の情報源も調べます。
- 人事台帳
- 部門ごとのExcel
- 雇用契約書
- 入社・身上変更の申請書
- 組織図
- 人事発令
- 評価シート
- 給与システム
- 勤怠管理システム
- 採用管理システム
- 研修管理資料
同じ情報が複数の場所にある場合は、どれが正本なのか、誰が更新しているのか、内容が一致しているのかを確認します。
3.導入後の業務とシステム化の対象範囲を決める
現状を整理したら、導入後の業務フローとシステム化の範囲を決めます。
経済産業省が公開しているタレントマネジメントシステムに関する資料でも、システム導入の背景・目的、導入後の業務のあるべき姿、人事システム全体における位置付け、システム化する部分・しない部分などを基本方針として定義する考え方が示されています。経済産業省「システム要件定義に於いて整備すべき項目」
対象範囲は、業務だけでなく次の単位でも明確にします。
- 対象となる会社・法人
- 部門・事業所・店舗
- 国内・海外拠点
- 正社員、契約社員、パートなどの雇用区分
- 休職者・出向者・退職者
- システムの利用者
- 初回導入で扱う機能
- 後から追加する機能
一度にすべてをシステム化する必要はありません。例えば、最初に従業員情報と組織情報を一元化し、その後に申請や評価へ範囲を広げる方法もあります。
重要なのは、対象外にした業務も記録しておくことです。「検討していない」のか「検討したうえで対象外にした」のかが分からないと、後から認識の違いが生じます。
4.機能・データ・非機能要件を整理する
導入後の業務フローに沿って、システムに必要な条件を整理します。
主な分類は次のとおりです。
- 業務要件
- 機能要件
- データ要件
- 権限要件
- 連携・移行要件
- セキュリティ・非機能要件
- 運用・保守要件
- 費用・契約・導入条件
機能要件は「何ができればよいか」を示す条件です。一方、非機能要件は、性能、可用性、セキュリティ、運用条件など、業務機能を支える条件を指します。
例えば、「従業員情報を検索できる」は機能要件です。「所定の権限を持つ人だけが閲覧できる」「障害時の連絡方法が決まっている」などは、権限要件や非機能・運用要件に該当します。
それぞれの具体的な確認項目は、後述する「人事システムの要件は8つの分類で整理する」で詳しく説明します。
5.要件に優先順位と受入条件を付ける
すべての要件を必須にすると、候補システムが見つからなかったり、費用が予算を超えたりする可能性があります。
要件ごとに、例えば次のような優先度を付けます。
- Must:導入に必須
- Should:できる限り満たしたい
- Could:余裕があれば実現したい
- 対象外:今回の導入では扱わない
優先度は、担当者の希望だけで決めません。法令・社内規程、導入目的、対象人数、発生頻度、代替運用の可否、費用などを基準に判断します。
さらに、必須要件には受入条件を設定します。
「組織情報を履歴管理できること」だけでは、どの状態なら要件を満たしたと判断するのか分かりません。例えば、次のように具体化します。
基準日を指定し、対象従業員の当時の所属部署と役職を、人事担当者が画面上で確認できること。
受入条件があれば、資料、デモ、無料トライアルなどを通じて、候補システムが要件を満たすか確認できます。
6.候補システムの標準機能と照合する
要件一覧を作成したら、候補システムの公式情報と照合します。
各要件について、次のいずれに該当するか確認しましょう。
- 標準機能で対応できる
- オプション機能で対応できる
- 設定変更で対応できる
- CSVなどの連携で対応できる
- 個別開発が必要
- 業務の変更で代替できる
- 対応できない
- 公式サイトだけでは判断できず、問い合わせが必要
資料に機能名が載っているだけでは、自社の運用に適合するとは限りません。対象者、入力項目、承認経路、権限、履歴、出力方法などを具体的な業務シナリオで確認します。
デモを依頼するときは、「従業員管理画面を見せてください」ではなく、次のように確認したい操作を伝えると判断しやすくなります。
従業員が住所変更を申請し、上司と人事部の承認後、人事担当者が変更内容と更新履歴を確認する流れを見せてください。
標準機能とオプション機能の区分、料金、導入支援、連携条件は変更される可能性があります。必ず各社の最新の公式資料や見積書で確認してください。
7.関係部門でレビューし、責任者が承認する
作成した要件は、人事部門だけで確定せず、関係部門でレビューします。
主な参加者と確認内容は次のとおりです。
| 関係者 | 主な確認内容 |
| 人事部門 | 人事業務、従業員・組織データ、異動、評価 |
| 労務・給与担当 | 入退社、身上変更、給与・社会保険関連のデータ |
| 情報システム部門 | セキュリティ、認証、連携、運用、障害対応 |
| 現場管理者 | 申請・承認、部下情報の閲覧、操作負担 |
| 経理・購買・法務 | 予算、契約、委託条件 |
| 経営層・プロジェクト責任者 | 導入目的、対象範囲、投資判断、最終承認 |
要件一覧は版数と変更履歴を管理します。要件を追加・変更する場合は、費用、スケジュール、ほかの要件への影響も記録しましょう。
最終的には、業務部門とシステム部門が理解できる表現になっているか、必須要件に確認方法があるか、対象外事項が明記されているかを確認し、責任者が承認します。
人事システムの要件は8つの分類で整理する
人事システムの要件は、次の8分類で整理すると抜け漏れを減らせます。
| 分類 | 主な確認内容 |
| 業務要件 | 導入後の業務、手順、担当者、承認、例外処理 |
| 機能要件 | 従業員管理、組織、異動、評価、申請、検索・集計 |
| データ要件 | 管理項目、形式、正本、履歴、品質、保有範囲 |
| 権限要件 | 閲覧・登録・編集・承認・出力できる人 |
| 連携・移行要件 | 周辺システム、連携項目・頻度、移行対象 |
| セキュリティ・非機能要件 | 認証、アクセス制御、ログ、性能、障害対策 |
| 運用・保守要件 | 更新担当、問い合わせ、教育、障害時の連絡 |
| 費用・契約・導入条件 | 初期費用、月額費用、オプション、契約、導入期間 |
①業務要件では入社・異動・評価・退職までの流れを定める
業務要件では、人事システム導入後の業務の進め方を定義します。
人事業務は複数の担当者や部門をまたぐため、「誰が・いつ・何をするか」を明確にすることが重要です。
主な確認項目には、次のものがあります。
- 入社時に誰が情報を登録するか
- 従業員本人が登録・変更できる項目は何か
- 身上変更申請を誰が承認するか
- 異動情報をいつ登録し、いつ反映するか
- 組織改編時に誰が組織データを更新するか
- 評価シートを誰が作成・配布・回収するか
- 休職者・出向者・退職者をどう管理するか
- 入力ミスや承認遅延が起きた場合にどう対応するか
システム化した後も人が行う作業は残ります。システムが処理する部分と、人が判断・確認する部分を区別してください。
②機能要件では「何ができるか」を業務目的と結び付ける
機能要件には、業務を実施するためにシステム上で必要となる処理を記載します。
人事システムで検討する主な機能は、次のとおりです。
- 従業員情報の登録・更新・検索
- 管理項目の追加・変更
- 組織情報の管理
- 組織図の作成・閲覧
- 所属・役職などの履歴管理
- 人事異動の登録
- 申請・承認ワークフロー
- 従業員本人による情報更新
- 人事評価の目標設定、配布、回収、調整
- 給与明細などの帳票配付
- アラート・お知らせ
- 条件指定による検索・集計
- CSVなどによる入出力
必要な機能は、導入するシステムの対象範囲によって異なります。例えば、給与計算は既存の給与システムに残し、新しい人事システムでは従業員情報の正本と組織情報だけを管理する場合もあります。
「一般的な人事システムにある機能」をすべて要件にするのではなく、自社の導入目的と業務フローから必要性を判断しましょう。
③データ要件では項目・正本・履歴・品質を定める
データ要件では、システムで管理する情報と管理方法を定義します。
項目ごとに、少なくとも次の内容を整理します。
- 項目名と定義
- データ形式
- 必須・任意
- 入力規則
- 選択肢
- 情報の取得元
- 更新するタイミング
- 正本となるシステム
- 履歴を残すか
- 閲覧・編集できる人
- 保存・削除のルール
- 外部システムとの連携有無
人事情報には、氏名や連絡先だけでなく、所属、職位、評価など、個人に関するさまざまな情報が含まれます。個人情報保護委員会のガイドラインでも、職種、肩書、評価など、個人に関する事実・判断・評価を表す情報は、特定の個人を識別できる場合には個人情報に含まれると説明されています。個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」
移行前には、重複、表記揺れ、未入力、古い情報なども確認します。データをそのまま移すのではなく、移行対象と品質基準を決めることが必要です。
④権限要件では閲覧・編集範囲を役割と情報単位で定める
権限要件では、「誰が、どの情報に対して、何をできるか」を定義します。
主な利用者には、次のような区分があります。
- 従業員本人
- 上司・部門管理者
- 評価者・承認者
- 人事担当者
- 給与・労務担当者
- システム管理者
- 経営層
- 代理承認者
「上司は部下の情報を閲覧できる」と定義するだけでは不十分です。住所、家族情報、給与、評価、保有資格など、情報の種類によって閲覧範囲を分ける必要があります。
また、閲覧だけでなく、登録、編集、削除、承認、CSV出力ができる人も確認します。異動、休職、組織変更に伴って権限を変更するタイミングも決めておきましょう。
⑤連携・移行要件ではデータの流れと責任範囲を明確にする
人事システムは、給与、勤怠、採用などの周辺システムと同じ従業員情報を扱うことがあります。
連携要件では、次の項目を整理します。
- 連携対象のシステム
- 連携するデータ項目
- データの受け渡し方向
- CSV、APIなどの連携方式
- 連携する頻度・タイミング
- 項目形式やコードの変換
- 連携エラーの検知方法
- エラー時の再処理方法
- 各システムの管理責任者
「連携可能」と書かれていても、自社が利用するサービス、契約プラン、必要な項目、連携方式に対応しているとは限りません。製品名と連携条件を公式情報やベンダーへの問い合わせで確認してください。
移行要件では、次の点を決めます。
- 移行する従業員の範囲
- 退職者を移行するか
- 過去何年分を移行するか
- 組織・異動・評価などの履歴を移行するか
- ファイルや証明書類を移行するか
- 移行前のデータを誰が修正するか
- 移行後に件数・内容をどう照合するか
- 移行できない情報をどこに保管するか
⑥セキュリティ・非機能要件では平常時と障害時の条件を決める
人事システムでは従業員の個人データを扱うため、機能だけでなく安全管理措置を検討する必要があります。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人データを情報システムで取り扱う場合の技術的安全管理措置として、アクセス制御、アクセス者の識別と認証、外部からの不正アクセス等の防止、情報システムの使用に伴う漏えい等の防止を挙げています。
要件定義では、自社が扱う情報やリスクを踏まえて、次のような項目を確認します。
- ID・パスワードの管理方法
- 多要素認証の有無
- 接続元の制限
- 通信の暗号化
- 閲覧・操作ログの取得範囲
- 権限の付与・変更・削除方法
- 退職者アカウントの停止方法
- バックアップ
- 障害時の復旧方針
- 利用可能な時間帯
- 同時利用者数や処理性能
- データの保管場所
- 委託先・再委託先の管理
- インシデント発生時の連絡方法
- セキュリティ認証の取得状況
認証を取得していることだけで、自社に必要な安全管理措置がすべて満たされるとは限りません。機能、契約、運用を含めて確認しましょう。
⑦運用・保守要件では更新担当と問い合わせ体制を決める
システムは導入して終わりではありません。組織改編、入退社、権限変更などを継続的に反映する必要があります。
運用・保守要件では、次の項目を確認します。
- 従業員・組織マスタの更新担当
- アカウントの発行・停止担当
- 権限を定期的に確認する方法
- 組織改編時の作業手順
- 操作に関する問い合わせ窓口
- 管理者・従業員向けの教育
- マニュアルの提供・更新
- ベンダーの問い合わせ対応時間
- 障害発生時の連絡・エスカレーション
- 制度・組織変更時の設定変更
- 機能アップデートの案内方法
誰が担当するか決まっていない要件は、導入後に運用されない可能性があります。システムの機能だけでなく、社内の役割分担まで要件定義に含めましょう。
⑧費用・契約・導入条件では総額と制約を確認する
料金は月額利用料だけで判断せず、導入から運用までに発生する費用を確認します。
主な費用項目は次のとおりです。
- 初期費用
- 月額・年額利用料
- 最低利用人数
- オプション機能
- 初期設定支援
- データ移行
- 外部システム連携
- 個別開発
- 操作研修
- 追加サポート
- 契約更新・解約時の費用
- データ出力・返却に関する費用
あわせて、契約期間、更新条件、解約条件、導入に必要な期間、社内で準備すべき作業も確認してください。
人事システム要件定義書には目的から受入条件までを記載する
要件定義書の形式や分量に一律の決まりはありません。プロジェクトの規模や対象業務に合わせて調整します。
人事システムの要件定義書には、主に次の項目を記載します。
- 導入の背景
- 現状の課題
- 導入目的・達成目標
- 対象会社・部門・従業員
- 対象業務・対象外業務
- 現行業務フロー
- 導入後の業務フロー
- システム全体における位置付け
- 業務要件
- 機能要件
- データ要件
- 権限要件
- 連携要件
- データ移行要件
- セキュリティ・非機能要件
- 運用・保守要件
- 費用・契約条件
- 導入体制・スケジュール
- 制約・前提条件
- 受入条件・確認方法
- 用語集
- 承認者・承認日
- 版数・変更履歴
本文にすべてを書き込むと読みにくくなる場合は、業務フロー、機能一覧、データ項目定義、権限表、連携一覧などを別紙に分けます。
要件一覧はID・根拠・優先度・確認方法まで記録する
要件一覧には、要件文だけでなく、必要とする理由や判定方法も記載します。
| 項目 | 記入例 |
| 要件ID | ORG-001 |
| 分類 | 組織・履歴管理 |
| 要件 | 基準日を指定して、従業員の当時の所属部署と役職を確認できること |
| 背景・目的 | 過去時点の組織情報を使った社内資料を作成するため |
| 対象者 | 人事担当者 |
| 優先度 | Must |
| 受入条件 | 指定した基準日の所属部署・役職が画面に表示される |
| 確認方法 | デモまたは無料トライアルで確認 |
| 製品側の対応 | 標準/オプション/代替運用/非対応 |
| 確認結果 | 未確認 |
「柔軟に管理できる」「使いやすい」といった表現は、人によって判断が異なります。「誰が」「どの条件で」「何をできること」のように、確認できる文へ変換しましょう。
要件定義で避けたい5つの失敗
1.欲しい機能の一覧から作り始める
機能一覧から作り始めると、導入目的と関係の薄い機能まで要件に入りやすくなります。
まず、課題、目的、導入後の業務を整理し、各機能がどの目的に必要なのかを説明できる状態にしましょう。
2.「現行と同じ」「使いやすい」など曖昧に書く
IPAも、「現行踏襲」「今と同じ」といった要求はトラブルの原因になり得ると説明しています。
現行業務を維持する場合でも、現在の手順、対象者、処理条件、例外処理を明文化します。「使いやすい」は、操作回数、利用端末、対象者、入力方法などの確認可能な条件へ置き換えましょう。
3.現場・給与担当・情報システム部門を参加させない
人事部門だけで要件を決めると、現場の申請・承認、給与データとの連携、セキュリティなどの条件が漏れる可能性があります。
全員がすべての会議に参加する必要はありません。要件の分類ごとに確認責任者を決め、必要なタイミングでレビューしてもらいます。
4.データ移行・権限・例外処理を後回しにする
画面や機能に注意が向き、データ移行、権限、エラー時の対応が後回しになることがあります。
しかし、既存データの形式や品質が合わなければ、予定どおり移行できません。権限が曖昧であれば、必要のない従業員情報まで閲覧できる設定になるおそれがあります。
通常どおり処理できる場合だけでなく、入力ミス、承認者の不在、連携エラーなどが起きた場合も確認しましょう。
5.要件をすべて必須にして優先順位を付けない
各部門の希望をすべて必須にすると、候補システムや予算が限られ、選定を進められないことがあります。
法令・社内規程上必要な条件、導入目的に直結する条件、代替運用できない条件を優先します。初回導入に含めない機能は、将来追加する要件として分ける方法もあります。
要件確定後は実データに近いシナリオで候補システムを確認する
要件定義が完了したら、候補システムの資料、デモ、無料トライアルなどを使って適合性を確認します。
確認結果は、「対応している/していない」だけでなく、次のように記録します。
- 標準機能で対応
- オプションで対応
- 設定変更が必要
- 運用変更が必要
- 外部サービスとの連携が必要
- 個別見積もりが必要
- 対応不可
- 確認中
デモでは、実際の従業員情報をそのまま使用せず、架空または適切に加工した検証用データを使いましょう。入社、異動、組織改編、身上変更、評価、退職など、自社で重要な業務をシナリオにして確認します。
要件とサイレコの機能を照合する
HRオートメーションシステム「サイレコ」は、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するクラウド型人事管理システムです。
公式サイトでは、従業員管理と管理項目のカスタマイズ、組織図、組織構成の履歴検索、申請承認管理、ワークフロー、給与明細、アラートなどの機能が案内されています。評価機能については、公式料金ページでオプションとして掲載されています。サイレコ公式機能紹介
セキュリティに関しては、SSLによる暗号化通信、パスワードポリシー設定、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)などが案内されています。接続元IPアドレス制限と二要素認証はオプションです。サイレコ公式セキュリティ
要件定義で整理した従業員情報、組織履歴、申請、権限、セキュリティなどの条件と照合し、自社の必須要件を満たすか確認してください。標準機能とオプションの区分、料金、連携サービス、導入条件は、最新の公式資料や問い合わせで確認する必要があります。
人事システムの要件定義に関するよくある質問
人事システムの要件定義は誰が行いますか?
人事部門が業務要件の整理を主導し、情報システム部門、給与・労務担当、現場管理者などが専門領域を確認する体制が基本です。
ベンダーの支援を受ける場合も、業務要件の正しさや優先順位は導入企業が判断し、責任者が承認します。
SaaS型の人事システムでも要件定義は必要ですか?
必要です。
SaaSでは詳細な画面やプログラムを設計するのではなく、標準機能との適合、オプション、設定、データ、権限、連携、移行、セキュリティ、運用、対象外事項を中心に整理します。
要件定義とRFPは何が違いますか?
要件定義は、自社がシステムに求める条件を具体化し、関係者で合意する工程です。
RFPは、その要件や導入条件を候補ベンダーへ提示し、実現方法、費用、スケジュールなどの提案を求めるための文書です。
まとめ|目的・業務・要件・受入条件を一続きで整理する
人事システムの要件定義では、機能を選ぶ前に、導入目的と現行業務を整理することが重要です。
次の7つのステップで進めましょう。
- 導入目的と達成目標を明確にする
- 現行業務・システム・データを棚卸しする
- 導入後の業務とシステム化の対象範囲を決める
- 機能・データ・非機能要件を整理する
- 要件に優先順位と受入条件を付ける
- 候補システムの標準機能と照合する
- 関係部門でレビューし、責任者が承認する
特に、人事システムでは、従業員・組織データの正本、履歴、閲覧権限、周辺システムとの連携、既存データの移行を早い段階で確認する必要があります。
要件を整理できたら、公式資料やデモを利用し、候補システムが必須条件を満たすか確認しましょう。
サイレコの機能、料金体系、導入支援について詳しく確認したい場合は、公式資料をご利用ください。実際の操作や自社要件との適合性を確かめたい場合は、14日間の無料トライアルも案内されています。