人事システムの導入は、稼働希望日から逆算し、「目的・対象範囲の決定、体制構築、要件整理・製品選定、初期設定、データ移行、テスト・研修、本稼働」の順で計画します。
必要な期間は従業員数だけでなく、移行するデータの量や状態、外部システムとの連携、権限設定、社内承認にかかる時間によっても変わります。そのため、一般的な期間をそのまま当てはめるのではなく、工程ごとの担当者・成果物・完了条件を決めることが重要です。
本記事では、人事システムの導入スケジュールを作る方法と、準備から本稼働までの手順、遅延を防ぐポイントを解説します。
人事システムの導入期間は対象範囲と準備状況によって変わる
人事システムの導入期間は、すべての企業で共通ではありません。
従業員情報の管理だけを対象にする場合と、申請・承認、人事評価、給与明細、外部システム連携まで含める場合では、必要な設定やテストの量が異なります。また、既存データに重複や表記ゆれが多ければ、データ整備にも時間がかかります。
導入スケジュールを考えるときは、次の2つを分けて見積もりましょう。
- 情報収集、要件整理、製品比較、社内稟議、契約にかかる期間
- 契約後の初期設定、データ移行、テスト、研修にかかる期間
ベンダーが公表している「導入期間」は、契約後の期間だけを示している場合があります。稼働希望日を決める際は、契約前の準備期間も含めて逆算することが必要です。
導入期間を左右する6つの要因
人事システムの導入期間に影響する主な要因は、次の6つです。
| 要因 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象業務 | 従業員管理、組織管理、評価、申請、給与明細など、どこまで導入するか |
| 対象者 | 利用する従業員数、管理者数、グループ会社・拠点の範囲 |
| 移行データ | 移行する項目、履歴、データ量、重複・欠損・表記ゆれの有無 |
| 外部連携 | 勤怠、給与、採用、労務手続など、連携が必要なシステム |
| 設定の複雑さ | 組織・役職マスター、閲覧権限、承認経路、評価制度など |
| 社内体制 | 意思決定者、実務担当者、情報システム部門が確保できる時間 |
短期間での導入を優先しすぎると、データ確認やテストが不十分になる可能性があります。導入期間の短さだけでなく、本稼働に必要な作業を無理なく完了できるかを確認しましょう。
人事システムの導入スケジュールは稼働日から逆算して作る
導入スケジュールは、作業を開始する日から積み上げるのではなく、「いつから使い始めるか」を決めて逆算する方法が適しています。
まず本稼働日を設定し、その前にテスト、データ移行、初期設定、製品選定を配置します。各工程には、作業日だけでなく社内確認や修正に使う期間も確保してください。
稼働日は人事業務の繁忙期を踏まえて決める
本稼働日は、対象となる人事業務の年間スケジュールを考慮して決めます。
例えば、人事異動に使用するシステムなら、異動発令の直前に切り替えると、組織情報の設定や確認が集中します。人事評価を対象にする場合も、評価期間の途中より、評価サイクルが始まる前に準備を終えるほうが運用を切り替えやすくなります。
稼働日の候補を決める際は、次の時期と重ならないか確認しましょう。
- 人事異動や組織改編
- 人事評価の開始・回収・調整
- 採用や入社手続きが集中する時期
- 給与・賞与・年末調整などの繁忙期
- 決算、予算策定、監査
- 他システムの更新や入れ替え
繁忙期に稼働せざるを得ない場合は、対象部署や機能を限定して段階的に導入する方法もあります。
スケジュール表には担当者・成果物・完了条件を入れる
日付と作業名だけでは、工程が本当に完了したか判断できません。導入スケジュール表には、少なくとも次の項目を入れます。
- 工程名
- 開始日・終了日
- 自社の担当者
- ベンダーの担当範囲
- 前工程との依存関係
- 作成する資料やデータ
- 承認者
- 完了条件
- 遅延した場合の対応
例えば、「データ移行」という作業については、単に取り込みが終わった状態ではなく、件数や主要項目を照合し、権限を含めて正しく表示されることを確認した状態を完了条件にします。
人事システム導入の7つの工程
人事システムの導入は、次の7工程で進めます。
1.導入目的と対象業務を決める
最初に、システムを導入する目的と対象範囲を明確にします。
「人事業務を効率化する」といった抽象的な目的だけでは、必要な機能やデータを判断できません。現在の業務を棚卸しし、解決する課題を具体化しましょう。
確認する項目の例は次のとおりです。
- どの業務に時間がかかっているか
- どの情報が複数のファイルやシステムに分散しているか
- 二重入力や転記が発生しているか
- 誰が情報を閲覧・更新するか
- 導入後にどのような状態を実現したいか
- 今回の導入対象に含めない業務は何か
一度にすべての業務を置き換えると、設定や移行の範囲が広がります。優先順位が高い業務から段階的に導入することも検討してください。
2.推進体制と役割分担を決める
人事システムの導入は、人事部門だけで完結するとは限りません。システム連携やセキュリティの確認には情報システム部門、予算や契約には経理・法務・購買部門などとの連携が必要になる場合があります。
主な役割を次のように整理します。
| 役割 | 主な担当 |
| プロジェクト責任者 | 方針決定、予算・重要事項の承認 |
| 人事実務担当 | 業務要件、管理項目、運用ルールの整理 |
| 情報システム担当 | セキュリティ、アカウント、外部連携の確認 |
| 部門管理者 | 現場運用、権限、操作性の確認 |
| ベンダー | 製品仕様の説明、設定・移行・テストの支援 |
| 利用者代表 | 実際の操作や案内内容の確認 |
誰が最終判断をするのかも決めておきましょう。確認者は多いものの承認者が不明確な状態は、スケジュール遅延の原因になります。
3.要件を整理して人事システムを選定する
現行業務をそのままシステム化するのではなく、必要な業務と不要な作業を分けたうえで要件を整理します。
要件には優先順位を付け、「必須」「あると望ましい」「対象外」に分類すると比較しやすくなります。
製品選定では、次の項目を確認してください。
- 対象業務に必要な機能
- 標準機能とオプション機能の区分
- 初期費用、月額費用、導入支援費用
- データ移行の方法と役割分担
- 外部システムとの連携方法
- 閲覧・編集権限の設定範囲
- セキュリティ対策
- 操作研修や問い合わせ対応
- 契約期間、解約条件、データ出力条件
- 想定するスケジュールで稼働できるか
デモや無料トライアルでは、人事担当者向け画面だけでなく、従業員や承認者が使う画面も確認します。実際の利用者が操作することで、マニュアルや研修に必要な準備も見積もりやすくなります。
4.マスター・権限・ワークフローを設定する
契約後は、自社の組織や業務に合わせて初期設定を行います。
主な設定対象には、次のものがあります。
- 組織、部署、役職
- 雇用区分、職種、勤務地
- 従業員情報の管理項目
- 利用者アカウント
- 閲覧・編集権限
- 申請・承認経路
- 通知・アラート
- 帳票や出力項目
設定を始める前に、誰がどの情報を閲覧・更新できるかを決めてください。人事情報には、住所、給与、評価など、取り扱いに注意が必要な情報が含まれます。必要以上に広い権限を付与しないことが重要です。
申請経路を設定する場合は、通常時だけでなく、兼務者、代理承認、組織変更、承認者不在時の運用も確認します。
5.既存データを整理して移行する
データ移行では、既存のExcelファイルや旧システムからデータを抽出し、新システムの項目に対応させます。
主な手順は次のとおりです。
- 移行するデータと移行しないデータを決める
- 新旧システムの項目を対応付ける
- 重複、欠損、表記ゆれ、古い情報を整理する
- テスト用データを取り込む
- 件数と主要項目を照合する
- エラーを修正して再度取り込む
- 本番移行を行う
- 移行後のデータと権限を確認する
「保存されているデータをすべて移す」と決めると、不要な履歴や不正確な情報まで持ち込む可能性があります。法令や社内規程による保存要件を確認したうえで、利用目的が明確なデータを選びましょう。
人事データの取り扱いでは、作業担当者、保存場所、受け渡し方法、作業後のデータ削除なども決めます。個人データの安全管理については、個人情報保護委員会の法令・ガイドラインも確認してください。
6.テスト・研修・社内周知を行う
本稼働前には、設定内容と実際の業務が合っているかをテストします。
最低限確認したい項目は次のとおりです。
- 従業員データが正しく登録されているか
- 組織・役職・所属が正しいか
- 閲覧・編集権限が適切か
- 申請が想定した承認者に届くか
- 通知やアラートが正しく送られるか
- 帳票やCSVが必要な形式で出力できるか
- 外部システムとの連携結果が正しいか
- 退職者、兼務者、休職者なども想定どおり扱えるか
テストで見つかった問題は、「設定変更で対応する」「運用ルールを変更する」「今回は対象外にする」など、対応方針を記録します。
同時に、利用者向けのマニュアル、説明会、問い合わせ窓口も準備します。周知内容には、導入目的、本稼働日、初回ログイン方法、利用者が行う作業、問い合わせ先を含めましょう。
7.本稼働後に初期不具合と定着状況を確認する
本稼働は、システム導入の終了ではなく、実運用の開始です。
稼働直後は、ログインできない、権限が不足している、通知先が違うといった問い合わせが集中する可能性があります。問い合わせの受付担当とベンダーへの連絡経路を決め、対応状況を記録してください。
本稼働後に確認する項目は次のとおりです。
- 未ログイン・未登録の利用者
- データや権限の誤り
- 申請の滞留
- 操作方法に関する問い合わせ
- 想定外に手作業が残っている業務
- 導入目的に対する改善状況
旧システムやExcel管理を停止する場合は、必要なデータが新システムで確認でき、業務上の問題がないことを確かめてから切り替えます。
人事システムの導入スケジュール例
以下は、稼働希望日から逆算して作るスケジュールの一例です。必要な期間は、導入範囲や製品によって調整してください。
| 時期 | 工程 | 主な作業 | 完了条件 |
| 稼働日の数カ月前 | 目的・範囲の決定 | 課題、対象業務、対象者、予算を整理 | 経営・関係部門が導入方針を承認 |
| その後 | 要件整理・製品選定 | 要件表作成、情報収集、デモ、見積もり、稟議 | 製品と契約条件が確定 |
| 契約後 | 初期設定 | 組織、項目、アカウント、権限、申請経路を設定 | 主要な設定がテスト可能 |
| 初期設定と並行 | データ整備・移行 | データ抽出、クレンジング、項目対応、テスト移行 | 件数・主要項目の照合が完了 |
| 稼働前 | 受入テスト | 権限、申請、通知、帳票、連携を確認 | 重大な問題が解消 |
| 稼働前 | 研修・社内周知 | マニュアル、説明会、問い合わせ窓口を準備 | 利用者への案内が完了 |
| 稼働日 | 本番切り替え | 本番データ反映、利用開始 | 主要業務を実行できる |
| 稼働後 | 初期支援・改善 | 問い合わせ対応、利用状況確認、設定修正 | 安定運用に移行 |
スケジュールには、各工程の修正期間も含めます。特にデータ移行と受入テストは、一度で完了するとは限りません。テスト移行、確認、修正、再移行の時間を確保しましょう。
人事システムの導入スケジュールが遅れる5つの原因
1.導入目的と対象範囲が決まっていない
途中で対象業務が増えると、必要な設定、データ、見積もり、テストも増えます。
プロジェクト開始時に対象範囲を決め、追加要望が出た場合は、本稼働前に対応するものと稼働後に対応するものを分けてください。
2.意思決定者が明確になっていない
管理項目や権限、申請経路について複数の意見が出ても、決定者がいなければ作業が止まります。
工程ごとに承認者と回答期限を決め、重要事項は記録に残しましょう。
3.移行データの状態を確認していない
従業員番号の重複、部署名の不統一、退職者情報の混在などが後から見つかると、移行が遅れます。
製品選定と並行して、移行元、データ量、更新責任者、欠損や重複の有無を調査してください。
4.外部連携の要件を後から追加する
勤怠・給与・採用などとの連携には、項目、更新頻度、データ形式、エラー時の対応を決める必要があります。
製品選定の段階で連携先を洗い出し、標準連携なのか、CSVによる受け渡しなのか、個別対応が必要なのかをベンダーに確認しましょう。
5.テストと利用者教育の期間が不足する
設定が完了しても、実際の業務で正しく使えるとは限りません。管理者だけでなく、申請者・承認者などの利用者を含めてテストする必要があります。
修正期間を含むテスト計画を作り、研修・マニュアル・問い合わせ窓口の準備もスケジュールに入れてください。
サイレコの導入までの流れ
HRオートメーションシステム「サイレコ」は、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するクラウド型人事管理システムです。
公式サイトでは、導入までの流れが次のように案内されています。
- 申し込み
- アカウント付与:約1週間
- 初期設定:約1~3カ月
- 運用開始
契約後は、導入プランに応じて、項目設定、情報登録、運用設計などを専任のサポートチームが支援すると案内されています。サイレコ「機能・サービス」
サイレコでは、従業員管理、管理項目のカスタマイズ、情報の一括入力、組織図、利用者設定、申請承認管理、ワークフローなどの機能が提供されています。複数のシステムで管理している情報は、CSVファイルによる一括登録にも対応しています。サイレコ「機能紹介」
ただし、約1~3カ月という期間は初期設定の目安です。製品選定、社内稟議、移行データの整理、外部連携の確認などに要する期間は、自社の条件に応じて別途見込む必要があります。
セキュリティについては、SSLによる暗号化通信、パスワードポリシー設定、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)が標準仕様として掲載されています。接続元IPアドレス制限と二要素認証は、料金プランページ上でオプションと案内されています。サイレコ「料金プラン」
人事システム導入前のチェックリスト
候補製品へ問い合わせる前に、次の項目を整理しておくと、導入スケジュールを具体化しやすくなります。
- 稼働希望日を決めている
- 導入目的と解決したい課題を整理している
- 対象業務と対象外業務を分けている
- 対象となる従業員・拠点・会社を決めている
- プロジェクト責任者と実務担当者を決めている
- 移行するデータと保存場所を把握している
- データの重複・欠損・表記ゆれを確認している
- 連携が必要なシステムを洗い出している
- 閲覧・編集権限の方針を決めている
- 申請・承認経路を整理している
- テスト担当者と完了条件を決めている
- 利用者向け研修と社内周知を予定している
- 本稼働後の問い合わせ窓口を決めている
- 旧システムやExcel管理を停止する条件を決めている
人事システムの導入スケジュールに関するよくある質問
人事システムの導入には何カ月かかりますか?
必要な期間は、対象業務、従業員数、移行データ、外部連携、設定内容によって異なります。
ベンダーが示す期間だけで判断せず、製品選定や社内稟議、データ整備、テスト、利用者研修を含めた総期間を確認してください。候補ベンダーには自社の条件と稼働希望日を提示し、実現可能性と役割分担を確認しましょう。
人事システムの導入準備はいつから始めるべきですか?
稼働希望日から、受入テスト、データ移行、初期設定、契約、製品選定に必要な期間を逆算して開始します。
人事異動や評価などの繁忙期に重なる場合や、複数システムとの連携が必要な場合は、余裕を持った計画が必要です。
データ移行と初期設定はどちらを先に進めますか?
まず、新システムで使用する項目やマスターと、既存データの対応関係を決めます。その後、初期設定とデータ整備を並行して進め、テスト移行と照合を行うのが基本です。
実際の手順や担当範囲は製品によって異なるため、契約前にベンダーへ確認してください。
まとめ|最初に稼働日・対象範囲・担当者を決める
人事システムの導入スケジュールは、稼働希望日から逆算して作成します。
最初に導入目的と対象範囲を決め、推進体制、要件整理、製品選定、初期設定、データ移行、テスト・研修、本稼働の順で計画しましょう。各工程には日付だけでなく、担当者、成果物、承認者、完了条件を設定することが重要です。
導入期間は自社のデータや運用によって変わります。候補ベンダーには、対象業務、移行データ、連携先、稼働希望日を提示し、作業内容と役割分担を具体的に確認してください。
人事情報の一元管理や人事業務の効率化を検討している場合は、サイレコの機能・導入までの流れを確認できます。自社の運用に合うか試したい場合は、公式サイトで案内されている14日間の無料トライアルも利用できます。