ステイインタビューとは、在職中の従業員に対して、仕事を続けている理由や職場への要望、働き続けるうえでの課題などを聞く個別面談です。従業員が会社に残りたいと感じる理由や、離職につながる可能性のある問題を把握し、職場環境やマネジメントの改善に生かすことを目的とします。
ステイインタビューを効果的に実施するには、質問項目を準備するだけでなく、従業員が率直に話せる環境を整え、面談後に具体的な対応を進めることが重要です。
本記事では、ステイインタビューの意味や退職面談との違い、具体的な質問例、実施手順、注意点を解説します。人事・労務担当者が自社で実践する際の参考にしてください。
ステイインタビューとは在職中の従業員の定着を支援する面談
ステイインタビューとは、在職中の従業員と対話し、仕事への意欲や職場に対する考え、今後のキャリア希望などを把握するための面談です。英語の「Stay Interview」に由来し、従業員が働き続けたいと感じる理由や、離職を考えるきっかけになり得る課題を確認します。
一般的には、直属の上司や人事担当者などが面談を実施します。従業員の話を聞き、必要な支援や改善策を検討することで、働きやすい職場づくりや人材定着につなげることを目指します。
ステイインタビューの考え方や実施方法については、米国の人事専門団体であるSHRMや、大学の人事部門が公開するガイドも参考になります。
参考:SHRM「The Secret to Effective Stay Interviews」
参考:ネブラスカ大学リンカーン校「Stay Interview」
ステイインタビューの目的は離職につながる課題を把握すること
ステイインタビューの主な目的は、従業員が働き続けたいと思う理由と、現在の職場で感じている課題を把握することです。
例えば、次のような情報を聞き取ります。
- 仕事にやりがいや達成感を感じる場面
- 職場の人間関係や上司とのコミュニケーション
- 業務量や働き方について改善してほしいこと
- 現在の仕事で得られている成長実感
- 今後経験したい業務やキャリアの希望
- 会社や上司に期待するサポート
こうした情報を把握することで、従業員ごとの事情に応じた支援を検討しやすくなります。複数の面談から共通する課題が見つかった場合は、特定の部署の業務負担やマネジメント方法など、組織全体の改善につなげることも可能です。
ただし、面談を実施するだけで離職を防げるわけではありません。聞き取った内容を整理し、対応できる課題から改善を進めることが重要です。
退職面談や従業員満足度調査とは目的・方法が異なる
ステイインタビューと混同されやすい取り組みに、退職面談や従業員満足度調査があります。いずれも従業員の意見を把握するための方法ですが、対象や目的が異なります。
| 比較項目 | ステイインタビュー | 退職面談 | 従業員満足度調査 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 在職中の従業員 | 退職する従業員 | 在職中の従業員など |
| 主な目的 | 定着の理由や改善課題の把握 | 退職理由や職場での経験の把握 | 満足度や組織全体の傾向の把握 |
| 主な方法 | 個別面談 | 個別面談や聞き取り | アンケートなど |
| 活用例 | 個別の支援や職場改善 | 退職要因の分析 | 組織全体の課題分析 |
ステイインタビューは、従業員が在職している段階で対話する点が特徴です。退職の意思表示を受けてから理由を聞くのではなく、働き続けるうえでの希望や課題を早い段階で把握し、改善に取り組むために活用します。
一方、従業員満足度調査は、複数の従業員から回答を集め、組織全体の傾向を把握する方法です。個別面談とアンケートを組み合わせることで、組織全体の課題と個々の従業員が抱える事情を分けて考えやすくなります。
ステイインタビューで使える質問例5選
ステイインタビューでは、従業員が自分の考えを自由に話せる質問を用意しましょう。回答を誘導する質問や、はい・いいえだけで終わる質問ばかりでは、具体的な事情を把握しにくくなります。
以下では、面談で活用しやすい質問例と、質問する目的、回答を深掘りするための聞き方を紹介します。
| 質問例 | 確認すること | 深掘りの例 |
|---|---|---|
| 仕事でやりがいを感じるのはどのようなときですか? | 意欲につながる業務や環境 | 「具体的には、どのような場面ですか?」 |
| 今の職場で成長できていると感じますか? | 成長実感やキャリアの希望 | 「今後、経験したい仕事はありますか?」 |
| この会社で働き続けたいと思う理由は何ですか? | 定着につながる要因 | 「その理由は、どのような経験から感じますか?」 |
| 仕事や職場で改善してほしいことはありますか? | 不満や業務上の障壁 | 「改善するとしたら、何から取り組むとよいですか?」 |
| 会社や上司にどのようなサポートを期待しますか? | 具体的な支援の要望 | 「どのような支援があると仕事を進めやすいですか?」 |
参考:SHRM「How to Conduct Stay Interviews: 5 Key Questions」
1. 仕事でやりがいを感じるのはどのようなときですか?
仕事でやりがいを感じる場面を聞くことで、従業員が意欲を持って取り組める業務や、職場の魅力を把握できます。
例えば、顧客から感謝されたとき、チームで目標を達成したとき、新しい業務を任されたときなど、やりがいを感じる理由は人によって異なります。
回答を聞いたら、「そのような仕事を今後も担当したいですか」「やりがいを感じる機会を増やすには、何が必要ですか」と質問してみましょう。本人の強みや希望を踏まえ、業務の進め方や役割分担を見直すきっかけになります。
2. 今の職場で成長できていると感じますか?
成長実感やキャリアの希望を聞くことで、現在の業務と本人が目指す方向性にずれがないかを確認できます。
例えば、「今後身につけたいスキルはありますか」「挑戦してみたい業務はありますか」と質問すれば、研修や業務経験、上司からの支援について具体的に検討できます。
希望するキャリアをすぐに実現できるとは限りませんが、本人が何を望んでいるのかを把握し、今後の成長機会について話し合うことが大切です。
3. この会社で働き続けたいと思う理由は何ですか?
働き続けたい理由を聞くことで、従業員が会社に感じている魅力を把握できます。
理由として考えられるのは、仕事内容、職場の人間関係、上司の支援、働き方、成長機会などです。回答が抽象的な場合は、「特にそう感じた出来事はありますか」と尋ねると、具体的な経験を理解しやすくなります。
こうした回答は、本人の意欲を支えている要素を理解するうえで役立ちます。ただし、一人の回答を組織全体の傾向と決めつけず、ほかの従業員の意見や職場の状況とあわせて確認しましょう。
4. 仕事や職場で改善してほしいことはありますか?
職場で感じている不便や不満を聞く質問です。業務量、情報共有、設備、勤務時間、チーム内の連携など、日常業務の中で生じている問題を把握します。
従業員が不満を話した場合は、すぐに反論したり、本人の努力不足として扱ったりせず、具体的な状況を確認しましょう。
例えば、「どのようなときに困りますか」「業務を進めやすくするには、何が変わるとよいですか」と聞くことで、改善すべきポイントを整理できます。
また、個人の工夫だけでは解決できない問題が見つかった場合は、部署の業務フローや人員配置など、組織的な対応が必要かどうかを検討します。
5. 会社や上司にどのようなサポートを期待しますか?
従業員が必要としている支援を具体的に把握するための質問です。仕事の進め方について相談したい、業務の優先順位を明確にしたい、研修の機会がほしいなど、要望はさまざまです。
回答を受けたら、「どのような支援があると助かりますか」「いつまでに対応できるとよいですか」と確認し、実施できることと、すぐには対応できないことを整理します。
すべての要望を実現する必要はありませんが、対応の可否や検討状況を本人に伝えることで、面談を実際の改善につなげやすくなります。
ステイインタビューの進め方を4ステップで解説
ステイインタビューは、事前準備から面談後のフォローアップまで、一連の流れで設計することが重要です。質問をして終わりにするのではなく、聞き取った情報を改善につなげる仕組みを整えましょう。
1. 面談の対象者・目的・実施方法を決める
最初に、面談の目的と対象者、実施方法を決めます。
対象者は、特定の部署や職種に限定する方法もあれば、幅広い従業員を対象にする方法もあります。自社が把握したい課題や、面談を担当する人員などを踏まえて設定しましょう。
準備する項目は次のとおりです。
- 面談の目的と対象者
- 面談担当者と実施時期
- 面談時間と実施場所
- 質問項目と記録方法
- 面談内容の利用目的と共有範囲
- 面談後の対応やフォローアップの方法
初めて実施する場合は、一度に多くの質問を用意するよりも、目的に沿った質問を絞り、継続して実施できる方法を選ぶとよいでしょう。
2. 個別面談で自由に話せる雰囲気をつくる
面談では、従業員が率直に話せる環境を整えます。面談の冒頭で、実施する目的や聞き取った内容の扱いを説明し、評価や処分を目的とした場ではないことを明確にしましょう。
また、質問を一方的に読み上げるのではなく、従業員の回答を聞きながら、必要に応じて具体的な状況を尋ねます。
例えば、「最近、仕事で困っていることはありますか」という質問に対して、従業員が業務量の多さを挙げた場合は、「特に負担が大きいのはどの業務ですか」「どのような支援があると改善できそうですか」と掘り下げます。
面談担当者は自分の意見を伝えることよりも、相手の話を理解することを優先しましょう。回答を急かしたり、否定したりせず、考える時間を確保することも大切です。
3. 面談内容を記録し、対応すべき課題を整理する
面談後は、本人の発言や要望、確認した課題、今後の対応方針を記録します。記録を残すことで、面談内容を振り返りやすくなり、担当者が変わった場合にも必要な情報を確認できます。
記録する項目の例は次のとおりです。
| 記録項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 面談日・担当者 | 実施日、面談を担当した人 |
| 本人の意見 | やりがい、希望、困りごとなど |
| 確認した課題 | 業務負担、情報共有、支援不足など |
| 対応方針 | 検討する改善策や支援内容 |
| 担当者・期限 | 対応を進める人、進捗を確認する時期 |
| フォローアップ | 対応状況、本人への説明、再確認事項 |
記録は、発言内容と担当者の解釈を区別し、事実に基づいて整理することが重要です。また、面談内容には個人的な事情が含まれる場合があるため、閲覧できる人や共有する範囲をあらかじめ決めておきましょう。
4. 改善策を実行し、本人に進捗を伝える
面談で課題を把握したら、対応できるものから改善に取り組みます。例えば、業務の優先順位を明確にする、上司との定期的な相談機会を設ける、情報共有の方法を見直すといった対応が考えられます。
ただし、従業員からの要望をすべて実現できるとは限りません。制度変更や人員配置など、すぐに判断できない課題については、検討に必要な情報を整理し、回答できる時期を伝えることが大切です。
改善を進める際は、次の点を確認しましょう。
- 優先的に対応する課題は何か
- 誰が対応を担当するのか
- いつまでに何を実施するのか
- 本人にどのように進捗を伝えるのか
- 改善後に状況を再確認する必要があるか
対応できない場合も、理由や代替案を説明します。面談で聞いた意見を放置せず、対応の状況を本人に伝えることが、継続的な対話につながります。
ステイインタビューを実施するときの注意点
ステイインタビューを実施する際は、質問項目だけでなく、面談の進め方や情報管理にも注意が必要です。従業員が安心して話せる環境を整え、聞き取った内容を適切に扱いましょう。
人事評価や業務指導の場にしない
ステイインタビューは、従業員の考えや希望を把握するための対話です。人事評価や業務指導と同じ場で実施すると、従業員が評価への影響を気にして、本音を話しにくくなる可能性があります。
そのため、面談の目的を明確にし、本人の意見を聞く時間を確保しましょう。課題が見つかった場合も、その場で責任を追及するのではなく、状況や原因を理解したうえで対応を検討します。
その場で改善を約束せず、対応できる範囲を明確にする
従業員から要望が出たときに、すべてを実現すると約束するのは避けましょう。制度や予算、人員配置などの事情により、対応できる範囲には限りがあります。
まずは要望の背景を確認し、対応可能なもの、検討が必要なもの、実現が難しいものに整理します。そのうえで、検討する場合は回答時期を伝え、対応が難しい場合は理由を説明しましょう。
面談で伝えた内容と実際の対応が食い違わないよう、担当者や対応期限を記録しておくことも大切です。
面談記録の閲覧範囲と情報の取り扱いを決める
面談では、仕事上の悩みだけでなく、家庭の事情や健康、キャリアに関する個人的な情報が話題になる場合もあります。記録を残す際は、何のために情報を利用するのか、誰が閲覧できるのかを明確にしましょう。
特に注意したいのは、次の3点です。
- 利用目的:面談内容を何のために記録し、どのような改善に活用するのかを明確にする
- 閲覧権限:業務上必要な担当者に限定し、不要な共有を避ける
- 保存・管理方法:保存場所や保管期間、更新・削除のルールを定める
面談記録を人事評価や配置検討などに利用する場合は、社内ルールとの整合性を確認し、従業員に説明できる運用にしておくことが重要です。個人情報を扱う場合は、社内の個人情報管理方針や関連する法令・ガイドラインも確認しましょう。
ステイインタビューは面談後の改善まで実施することが重要
ステイインタビューは、在職中の従業員に働き続ける理由や職場への要望を聞き、定着につながる環境づくりに生かすための面談です。退職面談とは異なり、離職を考える前の段階で、従業員の意見や課題を把握することを目的とします。
実施する際は、次のポイントを押さえましょう。
- 面談の目的と対象者を明確にする
- 働き続ける理由や改善要望を聞く質問を用意する
- 従業員が率直に話せる環境を整える
- 面談内容を適切に記録し、閲覧範囲を管理する
- 対応する課題や担当者、期限を決める
- 改善の進捗を本人に伝え、必要に応じて再確認する
大切なのは、面談を実施すること自体を目的にしないことです。従業員の意見を受け止め、対応できる課題から改善を進めることで、継続的な職場づくりにつなげられます。
面談記録や従業員情報の管理方法も見直そう
ステイインタビューを継続して実施する場合は、面談内容を適切に記録し、必要な情報を確認できる管理体制も重要になります。記録の保存先が分散していたり、担当者ごとに管理方法が異なったりすると、過去の対応状況を確認しにくくなるためです。
人事情報の管理方法を見直したい場合は、従業員情報や面談・研修の履歴などを管理できる人事管理システムを検討する方法もあります。
HRオートメーションシステム「サイレコ」は、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するクラウド型人事管理システムです。公式サイトでは、従業員情報の管理、面談・研修履歴の管理、管理項目のカスタマイズなどが案内されています。
ただし、ステイインタビュー専用の機能や、面談内容から離職リスクを自動判定する機能を前提にするのではなく、自社で必要な記録項目や閲覧権限、運用方法に対応できるかを確認することが重要です。
参考:サイレコ公式機能紹介
参考:サイレコ公式FAQ
ステイインタビューを通じて従業員の声を継続的に把握し、必要な改善につなげるためにも、面談の進め方と情報管理の両面から自社の運用を見直してみましょう。