自社に合う人事発令システムは「自社の発令パターン」で検証して選ぶ
機能一覧を見比べるだけでは、自社の発令業務に合うかどうかは判断できません。自社で実際に起きる発令パターンを用意し、デモや無料トライアルで試すことが、選定の失敗を防ぐ近道です。
1.発令種別・件数・関係システムを棚卸しする
まず、現在の発令業務を棚卸しします。次の項目を一覧にしておくと、提供会社への質問や比較がしやすくなります。
- 使っている発令種別(異動、昇格、兼務、出向、休職など)
- 年間の発令件数と、定期異動の時期・規模
- 発令の起案から承認までの流れと関係者
- 辞令・発令一覧など、作成している文書の種類
- 発令内容を反映しているシステムやファイル
- 過去の所属を確認する場面と、その頻度
- 発令の取消や訂正が起きた事例
棚卸しの結果、現在の課題が「入力の手間」なのか「発令日の切り替え」なのか「履歴の確認」なのかが見えてきます。課題の優先順位に応じて、8つの機能のうち重視すべきものを決めましょう。
2.デモ・無料トライアルで試したい発令パターン
デモやトライアルでは、標準的な操作だけでなく、自社で起こりうる例外的な発令も試します。以下はサンプルです。社員番号や部署名は、自社の実態に近いダミーデータに置き換えてください。
| 検証パターン(サンプル) | 確認する結果 |
|---|---|
| 4月1日付の定期異動を、CSVで一括登録する | 発令日前は旧所属のまま表示され、4月1日から新所属に切り替わるか |
| 社員番号「000123」の兼務を開始し、半年後に終了する | 主所属と兼務先が区別され、終了日以降は兼務が外れるか |
| 社員番号「000456」を在籍出向させる | 出向元の在籍情報と出向先の情報を両方記録できるか |
| 登録済みの発令を取り消す、または発令日を延期する | 誤って反映されず、取消・変更の記録が残るか |
| 入力ミスに気づき、過去の発令を訂正する | 訂正前後の内容と訂正日が記録されるか |
| 部署の新設と同時に、所属者を異動させる | 新部署の作成と所属変更が同じ発令日で整合するか |
| 発令データから辞令と社内掲示用の一覧を出力する | 自社の様式や並び順で出力できるか |
トライアルの期間は限られているため、検証パターンと確認担当者を事前に決めてから始めましょう。人事担当者だけでなく、発令後に組織図や承認経路を使う部門の担当者にも確認してもらうと、運用上の問題を見つけやすくなります。
3.費用・サポート・データ移行・セキュリティも同じ条件で比較する
機能が要件を満たしていても、費用や導入の負担が合わなければ運用は続きません。複数の製品を比較する際は、次の観点を同じ条件で確認します。
| 比較観点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 料金 | 初期費用、月額費用、従業員数による変動、発令関連機能がオプションかどうか |
| 対象規模 | 想定する従業員数、グループ会社の管理への対応 |
| データ移行 | 既存の人事データ・過去の異動履歴を移せるか、移行支援の有無 |
| 導入期間 | 契約から本稼働までの目安期間 |
| サポート | 初期設定の支援、運用開始後の問い合わせ方法 |
| セキュリティ | 通信の暗号化、アクセス制限、二要素認証、第三者認証の取得状況 |
| 連携 | 既存の給与・勤怠システムとの連携実績と方式 |
| 契約条件 | 最低契約期間、解約時のデータの扱い |
公式サイトに情報がない項目は、「要問い合わせ」として一覧に記録し、提供会社へ同じ質問を送ると比較しやすくなります。
法令上の確認と運用ルールはシステム任せにしない
人事発令システムは、発令データの登録や反映を効率化する道具です。発令の内容が適法かどうかや、社内ルールに沿っているかを判断するものではありません。導入後も、次の点は人が確認する必要があります。
配転・転勤の発令前に労働条件と個別事情を確認する
2024年4月1日から、労働契約を締結するときと有期労働契約を更新するときに、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示することが求められています。変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わりうる就業場所・業務の範囲のことです。出典:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
配置転換や転勤の発令を検討する際は、労働条件通知書や雇用契約書で明示した変更の範囲、職種や勤務地を限定する合意の有無を確認しましょう。合意した範囲を超える発令は、本人の同意なく一方的に行えるとは限りません。
また、育児・介護休業法第26条は、就業場所の変更を伴う配置によって子の養育や家族の介護が難しくなる労働者がいる場合、事業主にその状況への配慮を求めています。転勤を伴う発令では、本人の事情や意向を確認したうえで判断することが大切です。参考:厚生労働省「育児・介護休業法の施行について」
発令が有効かどうかは、契約内容や個別の事情によって判断が異なります。判断が難しい場合は、社会保険労務士や弁護士へ相談してください。法的な注意点の全体像は、人事異動の手順と内示・辞令の進め方でも解説しています。
発令データの閲覧権限と正確性を管理する
発令データには、所属や役職だけでなく、出向・休職などの個人に関わる情報が含まれます。個人情報保護法では、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることが求められています。また、利用目的の達成に必要な範囲で、個人データを正確かつ最新の内容に保つよう努めることとされています。出典:個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」
システムを導入する際は、発令データを登録・承認・閲覧できる担当者を業務上必要な範囲に限定します。発令前の情報を誰が見られるか、異動した担当者の権限をいつ外すかも決めておきましょう。
登録内容が承認済みの発令と一致しているかを確認する担当者を、登録担当者とは別に置くと、誤入力を見つけやすくなります。
稼働日を定期異動の直前に置かない
新しいシステムの本稼働日を定期異動の直前に設定すると、初期設定やデータ移行の確認と、発令データの登録が重なります。慣れない操作で大量の発令を処理することになり、ミスの原因になります。
本稼働は定期異動の時期を避け、通常の発令で操作に慣れてから、定期異動を迎えられるよう計画しましょう。
サイレコで人事発令業務を支援できる範囲
クラウド型人事管理システム「サイレコ」は、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するシステムです。公式サイトでは、人事発令の業務に関係する機能として次の内容が案内されています。
- 組織図:現在・過去の組織図の確認、人事異動シミュレーション、未来の組織図の作成
- 組織構成の履歴検索:基準日を設定した検索
- 情報入力:一括入力、テンプレート保存、CSVファイルによる一括登録
- 申請承認管理・ワークフロー
- アラート機能
- 組織全体管理:子会社・グループ会社の情報管理
これらの機能は、料金ページの「選べるメニュー」に掲載されています。利用したい機能の契約条件は、サイレコの料金プランとあわせて個別に確認してください。料金は1名あたり月額250円からの目安で、従業員100名程度からの想定と案内されています。
セキュリティについては、SSL暗号化通信、パスワードポリシー設定、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)が標準仕様として掲載されています。接続元IPアドレス制限と二要素認証はオプションです。
辞令の出力、発令日での自動切替、給与・勤怠システムへの発令データの連携など、本記事で挙げたほかの機能については、自社の運用に合うかを導入検討時に確認してください。組織図での異動検討や基準日による履歴検索の内容は、サイレコの機能紹介で確認できます。
基準日設定の活用例として、おはようキッズ株式会社の導入事例があります。同社では、行政へ提出する書類の作成のため、過去の日付時点で誰がどの部署にいたかを基準日設定で抽出しています。導入前は複数のExcelや紙から情報を集めていましたが、データ抽出が1分で完了するようになったと紹介されています。これは同社の運用での結果です。
人事発令システムに関するよくある質問
人事発令システムと人事管理システムは別の製品ですか?
人事管理システムの一機能として発令管理を提供する製品もあれば、発令業務に特化したサービスもあります。
従業員情報や組織図をすでに人事管理システムで管理している場合は、その製品の発令機能で足りるかを先に確認しましょう。発令件数や連携先が多い場合は、本記事の8つの機能を基準に比較してください。
Excelのままでもよいのはどんな場合ですか?
発令件数が少なく、更新担当者が限られ、連携するシステムも少ない場合は、Excelで運用できることもあります。
その場合も、正本とするファイル、編集できる人、版の管理方法、変更履歴の残し方を決めておく必要があります。転記や照合に時間がかかるようになった、過去の所属を確認できない、といった問題が出てきたら、システム化を検討するタイミングです。
発令を事前登録すると、発令日前に新しい所属が見えてしまいませんか?
製品によって異なります。未来日付の発令を人事担当者だけが閲覧でき、従業員名簿や組織図には発令日から反映される製品もあれば、登録時点で表示が変わる製品もあります。
事前登録を予定している場合は、未来日付の発令が誰に・どの画面で表示されるかを、デモやトライアルで必ず確認してください。
発令を取り消したり、遡って訂正したりする場合はどう扱いますか?
まず、入力誤りの訂正なのか、正式に決まった発令の変更・取消なのかを区別します。どちらも、変更前の内容を消さずに、訂正日・理由・承認者を記録しておくことが大切です。
システムによって、取消や訂正の操作方法と履歴の残り方は異なります。登録済みの発令を取り消した場合に連携先へ誤った情報が送られないかも、あわせて確認しましょう。
まとめ|発令データの登録・反映・履歴を、自社のパターンで確かめる
人事発令システムを選ぶときは、辞令を作成できるかだけでなく、発令データを正しく登録し、発令日に反映し、履歴として残せるかを確認することが大切です。
- 発令業務を「登録・反映・履歴・通知」の4つに分けて考える
- 8つの機能について、提供会社に具体的な質問をする
- 兼務・出向・取消・遡及訂正など、自社の発令パターンで検証する
- 費用・サポート・データ移行・セキュリティも同じ条件で比較する
- 法令上の確認と社内ルールの運用は、システム任せにしない
まずは、現在の発令種別・件数・関係システムを棚卸しし、検証パターンの一覧を作ることから始めましょう。
自社の発令パターンを整理したら、実際の画面で「組織図での異動検討」「CSVでの一括登録」「基準日での履歴確認」を試してみましょう。サイレコでは、これらの機能を14日間の無料トライアルで確認できます。利用したい機能の提供条件は、導入検討時にあわせてご確認ください。