ハイポテンシャル人材を見極めるには、現在の業績や上司からの評価だけで判断するのではなく、将来担わせたい役割に必要な能力と、そこへ成長する可能性を複数の情報から確認することが重要です。
ハイポテンシャル人材は、単に現在の成果が高い人を指すわけではありません。将来の上位職や重要な役割で成果を上げられる可能性を考えるため、現在のパフォーマンスと将来性を分けて評価する必要があります。
本記事では、ハイポテンシャル人材とハイパフォーマーの違いを整理したうえで、見極める際の5つの視点、具体的な選抜手順、よくある失敗、人材データを活用した見極め方を解説します。
この記事の要約
- ハイポテンシャル人材は「現在の成果」だけでは判断しない
- まず将来担わせたいポジションや役割を明確にする
- 能力、経験から学ぶ力、周囲への影響力、本人の意欲などを複数の情報から確認する
- 上司1人の推薦だけに依存せず、複数の視点で選抜する
- 選抜後も育成・配置・評価とつなげ、候補者を継続的に見直す
ハイポテンシャル人材とは、将来の上位職で活躍する可能性が高い人材
ハイポテンシャル人材とは、一般に、現在よりも上位の職務に就いた場合でも、企業が期待する成果を上げられる可能性が高い人材を指します。
日本エス・エイチ・エル(SHL)は、ハイポテンシャル人材に求められる要件として、「上位職に求められる能力」「より上位職に就きたいという上昇志向」「エンゲージメント」の3つを挙げています。
つまり、ハイポテンシャル人材を見極めるときは、「今の仕事で成果を出しているか」だけでなく、将来の役割に必要な能力を持っているか、その役割を担う意思があるかといった観点も確認することが大切です。
ただし、どのような人材をハイポテンシャルとするかは、企業の事業戦略や将来のポジションによって異なります。全社共通の人物像を先に決めるのではなく、まず対象となる役割を明確にすることが重要です。
参考:日本エス・エイチ・エル「ハイポテンシャル人材とは何か?また、その見極め方はあるのか?」
ハイポテンシャル人材とハイパフォーマーは同じではない
ハイポテンシャル人材とハイパフォーマーは、重なる場合がありますが、同じ意味ではありません。
| 比較項目 | ハイパフォーマー | ハイポテンシャル人材 |
|---|---|---|
| 主な評価対象 | 現在の業務における成果 | 将来の役割で活躍する可能性 |
| 見る範囲 | 現在の職務・過去の実績 | 現在の能力+将来の役割への適応可能性 |
| 主な情報 | 目標達成度、業績、評価など | 能力、経験、意欲、評価、適性など |
| 活用場面 | 現職での評価・配置 | 次世代リーダーや上位職候補の選抜など |
たとえば、現在の営業職で高い売上を上げている人が、必ずしも管理職として高い成果を出せるとは限りません。管理職には、メンバー育成、目標設定、意思決定、組織全体を考えた行動など、現在の職務とは異なる能力が求められる場合があります。
そのため、「現在の成果が高いから、将来の管理職候補にする」という一段階だけの判断は避けることが重要です。
ハイポテンシャル人材を見極める5つの視点
ハイポテンシャル人材の見極めでは、単一の評価項目だけを見るのではなく、将来の役割に照らして複数の情報を確認します。
実務上は、次の5つの視点を評価基準の土台にすると整理しやすくなります。
- 将来の役割に必要な能力を備えているか
- 経験から学び、未知の課題に対応できるか
- 周囲を巻き込み、影響を与えられるか
- より大きな役割を担う意欲があるか
- 複数の情報から将来性を確認できるか
1. 将来の役割に必要な能力を備えているか
最初に確認したいのは、将来担わせたい役割で求められる能力をどの程度備えているかです。
たとえば、将来の事業責任者候補を選ぶのであれば、現在の営業成績だけではなく、事業全体を見る視点、意思決定力、周囲との協働、問題解決など、その役割に必要な能力を定義します。
重要なのは、「優秀な人とはどのような人か」から考えないことです。
「将来この役割を担うには、何ができる必要があるか」から逆算して評価項目を設定します。
2. 経験から学び、未知の課題に対応できるか
将来の役割では、現在と同じ仕事を続けるとは限りません。そのため、これまでの経験から学び、環境や課題が変わったときに対応できるかを確認することも重要です。
たとえば、次のような行動事実を確認します。
- 過去の失敗から改善方法を考えているか
- 新しい仕事を任された際に、自ら必要な情報を集めているか
- 過去の経験を別の業務にも応用しているか
- 環境が変わっても成果を出すために行動を変えられるか
「学習力が高い」「適応力がある」といった抽象的な評価だけでは、評価者によって判断が分かれます。実際の行動や成果に置き換えて確認できる基準を作ることがポイントです。
3. 周囲を巻き込み、影響を与えられるか
上位職になるほど、自分一人で成果を出すだけではなく、周囲と協力して組織全体の成果を高めることが求められます。
そのため、現在の個人業績に加えて、次のような行動も確認します。
- 関係者の意見を整理して合意形成につなげているか
- 周囲の協力を得ながら仕事を進めているか
- 後輩や同僚の成長を支援しているか
- 自分の担当範囲を超えて組織の課題に取り組んでいるか
ただし、「リーダーシップがある」という印象だけで評価するのは避けましょう。「どのような状況で、どのような行動を取り、どのような結果につながったか」という具体的な事実を確認することが大切です。
4. より大きな役割を担う意欲があるか
能力が高くても、本人が将来的に上位職やより大きな役割を希望しているとは限りません。
SHLも、ハイポテンシャル人材の要件として、より上位職に就きたいという上昇志向を挙げています。
そのため、本人のキャリア志向や、今後担いたい役割を確認することが必要です。
ただし、管理職志向がないことだけを理由に「ポテンシャルがない」と判断するのは適切ではありません。どのポジションを将来の候補として想定しているのかを明確にし、その役割との関係で本人の意向を確認することが重要です。
参考:日本エス・エイチ・エル「Insight Platform(High Potential レンズ)」
5. 複数の情報から将来性を確認できるか
ハイポテンシャル人材の選抜では、上司の印象や一度の評価だけに依存しないことが重要です。
たとえば、次のような情報を組み合わせて確認します。
- 人事評価の結果
- 過去の職務経験
- 保有スキル・資格
- 異動・配置の履歴
- プロジェクトなどでの成果
- 本人のキャリア志向
- 必要に応じた適性検査などの結果
リクルートマネジメントソリューションズも、次世代リーダー候補の選抜では、各部門の推薦だけに頼らず、経営・人事・部門など多様な視点を取り入れることをポイントとして挙げています。
複数の情報を組み合わせることで、特定の上司との関係や一時的な成果だけに左右されるリスクを抑えやすくなります。
参考:リクルートマネジメントソリューションズ「ハイポテンシャル人材の評価・選抜」
ハイポテンシャル人材を見極める5ステップ
判断基準を作っただけでは、実際の選抜にはつながりません。人事制度や人材データの運用に組み込むため、次の5ステップで進めると整理しやすくなります。
STEP1:将来必要なポジションと役割を定義する
最初に、どのポジションの候補者を選ぶのかを明確にします。
「将来のリーダー候補」という表現だけでは、必要な能力を具体化しにくいためです。
たとえば、「営業部門のマネージャー」「事業責任者」「専門領域のリーダー」など、対象となる役割を明確にし、その役割で期待する成果や行動を整理します。
STEP2:選抜基準を評価項目に落とし込む
次に、将来の役割に必要な能力を評価項目へ落とし込みます。
このとき、「主体性がある」「リーダーシップが高い」などの抽象的な表現だけで終わらせないことが重要です。
| 抽象的な基準 | 具体化した確認例 |
|---|---|
| 主体性がある | 課題を発見し、自ら関係者に働きかけて改善を実行した |
| リーダーシップがある | 異なる意見を持つ関係者をまとめ、合意形成につなげた |
| 学習力がある | 過去の経験を振り返り、次の業務で改善行動を取った |
| 問題解決力がある | 原因を整理し、関係者と解決策を実行した |
評価者によって判断が変わりにくいように、可能な限り行動や成果として確認できる形にします。
STEP3:評価・経験・スキルなどの人材情報を集める
選抜基準を決めたら、判断に必要な情報がどこにあるのかを整理します。
評価履歴は人事システム、スキルはExcel、異動履歴は人事台帳、キャリア志向は面談記録というように情報が分散している場合、候補者を比較するたびに情報を集め直す必要があります。
そのため、選抜に使用する情報をあらかじめ整理し、継続的に更新できる状態を作ることが重要です。
STEP4:複数の視点から候補者を評価する
候補者を決定するときは、直属の上司だけではなく、必要に応じて人事、部門責任者、経営層など複数の視点から確認します。
特に、現在の業務成果を高く評価する人と、将来の役割要件を見る人では、候補者に対する見方が異なる場合があります。
複数の視点を組み合わせ、選抜基準に照らして候補者を検討することで、推薦者の主観だけに依存するリスクを抑えやすくなります。
STEP5:候補者を育成・配置につなげ、再評価する
ハイポテンシャル人材の選抜は、候補者を決めて終わりではありません。
候補者に不足している能力があれば、研修やOJT、プロジェクトへの参加など、成長につながる経験を設計します。また、将来の役割に必要な経験を積めるよう、配置や業務アサインを検討することも重要です。
その後の評価や経験によって候補者の状況が変わる可能性もあるため、定期的に見直します。
ハイポテンシャル人材の見極めで起こりやすい3つの失敗
現在の評価が高い人だけを選ぶ
最も起こりやすいのが、現在の人事評価や業績が高い社員を、そのままハイポテンシャル人材として選ぶことです。
しかし、上位職では現在とは異なる能力が求められる場合があります。
「現在の成果」と「将来の役割に必要な能力」を分けて評価し、将来のポジションに対する適性を確認しましょう。
上司の推薦だけで決める
現場の上司は、候補者の日常的な仕事ぶりを把握しているというメリットがあります。一方で、上司との関係性や評価基準によって推薦に偏りが生じる可能性があります。
そのため、推薦を候補者発掘の入口として活用しながら、人事評価、職務経験、スキル、本人の意向などを組み合わせて判断する方法が考えられます。
選抜後の育成・配置につなげない
候補者を選んでも、現在の仕事を続けるだけでは、将来の役割に必要な経験を積めない場合があります。
「選抜→育成→配置→評価」という流れを設計し、候補者の成長を継続的に確認しましょう。
ハイポテンシャル人材の見極めには、人材情報を継続的に蓄積する仕組みも重要
ハイポテンシャル人材を適切に見極めるには、選抜時だけ情報を集めるのではなく、日常の人事業務を通じて人材情報を蓄積しておくことが重要です。
評価、所属、役職、異動履歴、スキルなどが分散していると、候補者を比較するときに情報収集から始めなければなりません。
一方、人材情報を継続的に蓄積・更新できる状態にしておけば、必要なタイミングで複数の情報を確認しやすくなります。
評価・スキル・経験などを時系列で確認できる状態にする
ハイポテンシャル人材の見極めでは、現在の情報だけでなく、これまでどのような仕事を経験してきたのか、評価がどのように変化してきたのかを確認することも重要です。
たとえば、次の情報を整理しておくと候補者の検討材料になります。
- 現在の所属・役職
- 過去の所属・異動履歴
- 人事評価の履歴
- 保有スキル・資格
- 職務経験
- 研修・育成履歴
- 本人のキャリア志向
ただし、管理する項目を増やせばよいわけではありません。実際の人事判断に使う情報を明確にし、更新ルールまで含めて設計することが重要です。
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ハイポテンシャル人材の見極めにおいても、システムが候補者を自動的に判定するというより、評価や経験などの人材情報を蓄積し、将来の役割に必要な基準と照らし合わせて検討できる状態を整えることが重要です。
サイレコの評価機能では、評価シートの作成・配布・回収や評価点調整などが案内されています。料金ページでは、MBO・OKR評価やコンピテンシー評価などがオプションとして掲載されているため、導入を検討する際は最新の提供条件を確認しましょう。
ハイポテンシャル人材の選抜に活用する際のポイント
- 将来の役割に必要な能力を先に定義する
- 現在の評価だけで候補者を決めない
- 評価・経験・スキルなど複数の情報を確認する
- 本人のキャリア志向も確認する
- 複数の関係者から候補者を評価する
- 選抜後の育成・配置・評価までつなげる
ハイポテンシャル人材の見極めチェックリスト
自社の選抜基準を見直す際は、次の項目を確認してみましょう。
- □ 将来の対象ポジションを明確にしている
- □ 対象ポジションに必要な能力を定義している
- □ 現在の業績だけを選抜基準にしていない
- □ 過去の経験や成果を確認している
- □ 新しい課題への対応や学習に関する行動を確認している
- □ 周囲を巻き込んだ経験を確認している
- □ 本人のキャリア志向を確認している
- □ 上司1人の推薦だけで候補者を決めていない
- □ 複数の人材情報を組み合わせている
- □ 選抜後の育成・配置まで設計している
- □ 定期的に候補者を見直している
まとめ:ハイポテンシャル人材は「将来の役割」と「複数の人材情報」で見極める
ハイポテンシャル人材を見極めるときは、現在の業績や人事評価だけで判断しないことが重要です。
まず、将来担わせたいポジションや役割を明確にし、その役割に必要な能力を定義します。そのうえで、次の5つの視点から候補者を確認します。
- 将来の役割に必要な能力を備えているか
- 経験から学び、未知の課題に対応できるか
- 周囲を巻き込み、影響を与えられるか
- より大きな役割を担う意欲があるか
- 複数の情報から将来性を確認できるか
また、上司の推薦だけに依存せず、人事・現場・経営など複数の視点を取り入れることも重要です。
さらに、選抜した候補者を育成や配置につなげ、評価や経験の変化を継続的に確認することで、ハイポテンシャル人材の発掘を一度きりの選抜で終わらせず、人材戦略につなげられます。
そのためには、評価、スキル、経験、異動履歴などの人材情報を継続的に蓄積し、必要なときに確認できる環境を整えることも重要です。
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参考資料
- 日本エス・エイチ・エル|ハイポテンシャル人材とは何か?また、その見極め方はあるのか?
- 日本エス・エイチ・エル|Insight Platform(High Potential レンズ)
- 日本エス・エイチ・エル|ハイポテンシャル人材
- リクルートマネジメントソリューションズ|ハイポテンシャル人材の評価・選抜
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