金融機関の人事では、採用や労務管理だけでなく、専門人材の確保・育成、人材配置、多様な人材の活用など、人材戦略まで含めた対応が求められています。特に金融業務のデジタル化や専門化が進むなかでは、従業員の所属・職歴・評価などの人事情報を蓄積し、必要な場面で活用できる環境が重要です。
日本銀行も、金融機関の業務がデジタル化や専門分化などによって多様化し、多様な専門人材の確保が必要になっていることを人材戦略の背景として挙げています。
この記事では、金融機関の人事の特徴や課題、人事データを活用する方法、人事DXを進める際のポイント、人事管理システムを選ぶときの確認項目を解説します。
この記事の要約
- 金融機関の人事では、従来の採用・労務管理に加えて人材戦略が重要になっています。
- 専門人材の確保・育成、人材配置、多様な人材の活用などが人事課題となります。
- 人事データを蓄積・整理し、人材配置や育成などの意思決定に活用できる状態をつくることが重要です。
- 人事DXでは、いきなりシステムを導入するのではなく、まず業務とデータの所在を整理することがポイントです。
金融機関の人事は「人材管理」から「人材戦略」へ役割が広がっている
金融機関の人事には、採用、労務管理、給与、評価、異動などの従来型の人事業務に加えて、経営戦略と連動した人材マネジメントが求められています。
背景の一つが、金融機関の業務領域の変化です。日本銀行は、金融機関の業務について、デジタル化や気候変動への対応、地域経済の活性化、顧客の経営課題の解決支援などにより、多様化・専門分化していると説明しています。
そのため、人事部門にも「人を採用して配置する」だけではなく、経営に必要な人材をどのように確保し、育成し、適切に配置するかという視点が求められます。
金融機関の人事が担う主な業務
金融機関の人事業務は、一般的な企業の人事業務と共通する部分が多い一方、組織規模や事業領域に応じて幅広い人材情報を扱うことになります。
| 業務 | 主な内容 |
|---|---|
| 採用 | 新卒・中途採用、専門人材の確保など |
| 人材配置 | 部署・役職・拠点などを踏まえた配置や異動 |
| 人材育成 | 研修、キャリア形成、専門性の向上など |
| 人事評価 | 目標設定、評価、評価結果の活用など |
| 労務管理 | 従業員情報、各種申請、労務関連手続きなど |
| 組織・人材データ管理 | 所属、役職、異動履歴、評価などの情報管理 |
これらの業務を個別に管理するだけではなく、蓄積した情報を人材配置や育成などの判断に活用することが、これからの人事には重要です。
金融機関の人事で特に意識したいのが「専門人材」と「多様な人材」
金融機関では、従来の金融業務に加えてデジタル化や専門化への対応が求められています。そのため、必要な人材の種類も多様化しています。
日本銀行は金融機関の人材戦略に関する資料で、多様な専門人材の確保が必要になっていることを指摘しています。
また、2026年には日本銀行が「金融機関のダイバーシティ・マネジメント」をテーマとしたセミナーを開催し、女性活躍、両立支援、男性の育児参画、ニューロダイバーシティなど幅広いテーマを扱っています。
こうした変化を踏まえると、人事担当者には「どのような人材が在籍しているのか」「どのような経験・スキルを持っているのか」「どの部署に配置されているのか」といった情報を把握し、必要な人材施策につなげることが求められます。
金融機関の人事が直面する4つの課題
金融機関の人事を取り巻く環境が変化するなか、特に重要になるのが「専門人材」「人材配置」「多様な人材」「人事データ」の4つです。
1.専門人材・デジタル人材を確保・育成する
金融機関では、デジタル化などに対応するための専門人材が必要になっています。
金融庁もデジタル社会の実現に向けた取り組みの一環として、デジタル人材の確保・育成計画を公表しています。
金融機関の人事では、単に採用人数を確保するだけではなく、どのような専門性が必要なのかを整理し、既存人材の育成や配置と合わせて考えることが重要です。
2.人材配置を高度化する
人材配置では、現在の所属や役職だけでなく、これまでの異動、経験、評価などを踏まえて検討することが重要です。
たとえば、過去の所属部署や役職の情報が個別のExcelなどに分散していると、異動候補者を検討するたびに複数の資料を確認しなければならない場合があります。
人材配置をデータに基づいて検討するには、現在の情報だけでなく、過去の履歴を含めて必要な情報を確認できる状態にすることがポイントです。
3.多様な人材が活躍できる環境を整える
金融機関の人事では、女性活躍や仕事と家庭の両立支援など、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりも重要なテーマです。
日本銀行は2026年の金融機関向けセミナーで、ダイバーシティ・マネジメントを成長戦略の一部として取り上げています。
人事担当者がこうした施策を進める際にも、従業員の所属や役職、キャリア、各種人事情報などを適切に管理し、施策の対象や状況を把握できる基盤が必要になります。
4.人事情報が分散すると意思決定に時間がかかる
人事情報がExcel、紙、メール、複数のシステムなどに分散していると、必要な情報を探したり、複数の情報を照合したりする作業が発生します。
特に人材配置や組織変更の検討では、「現在の所属」だけでなく、「過去の所属」「役職」「評価」「その他の人事情報」などを確認する必要があります。
そのため、人事情報を一元管理するだけでなく、必要な情報を検索・集計し、意思決定に利用できる状態に整えることが重要です。
人事情報の一元管理については、以下の記事でも詳しく解説しています。
人事情報を一元管理する方法とは?Excel管理の課題とシステムの選び方
金融機関の人事データは「蓄積」だけでなく「意思決定」に使う
人事データを管理する目的は、情報を保存することだけではありません。重要なのは、蓄積した情報を人材配置や育成、組織づくりなどの意思決定に活用することです。
たとえば、次のような情報を組み合わせることで、人事業務に活用できる場面が広がります。
| 管理する情報 | 活用例 |
|---|---|
| 所属・役職 | 現在の組織構成の把握 |
| 異動履歴 | これまでの経験を踏まえた配置検討 |
| 評価情報 | 人材育成や評価施策の検討 |
| 資格・スキルなど | 専門性を踏まえた人材配置・育成 |
| 組織情報 | 組織構成や人員状況の把握 |
ただし、管理項目を増やせば人材戦略が高度化するわけではありません。
「どの業務や判断に使うのか」を先に決め、その目的に必要な情報を整理することが重要です。
人材配置に活用する
人材配置を検討するときには、現在の所属だけでなく、過去の所属や役職などの履歴を確認できると、これまでの経験を踏まえた検討がしやすくなります。
特に組織変更や異動の検討では、現在の組織と変更後の組織を比較しながら考えられる環境があると、人事担当者が必要な情報を確認しやすくなります。
人材育成・専門性の把握に活用する
専門人材を育成するには、現在どのような人材がいるのかを把握する必要があります。
資格やスキル、経験、評価など、自社の目的に応じて必要な情報を整理しておけば、育成施策や配置検討に活用できる可能性があります。
ただし、どの項目を管理するかは組織によって異なるため、最初から項目を増やしすぎず、利用目的に応じて設計することが重要です。
組織構成や人員状況を可視化する
人事データを組織情報と紐づけることで、組織ごとの人員構成や過去の変化などを確認しやすくなります。
こうした情報を人事部門だけでなく、必要な範囲で経営・マネジメントに共有できれば、人材に関する判断をデータに基づいて行うための基盤になります。
金融機関が人事DXを進めるときの4つのポイント
人事DXを進める際は、最初からシステムを導入するのではなく、現在の業務とデータの状態を整理してから検討することが重要です。
1.人事業務とデータの所在を整理する
まず、どの人事情報をどこで管理しているかを洗い出します。
- 従業員情報はどこで管理しているか
- 組織情報はどこで管理しているか
- 異動履歴を確認できるか
- 評価情報はどこに保存されているか
- 紙やExcelで管理している情報はないか
- 複数のシステムに同じ情報を登録していないか
最初に情報の所在を把握すると、システム導入によって何を改善したいのかが明確になります。
2.「何の判断に使うか」から管理項目を決める
人事データを管理するときは、「何を登録するか」から考えるのではなく、「何のために使うか」から逆算するのがおすすめです。
たとえば人材配置に使うのであれば、所属や役職だけでなく、必要に応じて過去の所属や経験などを確認できる状態が必要になります。
一方、すべての情報を一つのシステムに集約する必要があるとは限りません。既存システムとの役割分担や連携も含めて検討しましょう。
3.権限・更新ルールを決める
人事情報には従業員に関するさまざまな情報が含まれるため、誰が閲覧・編集できるのかを明確にする必要があります。
システムを導入すれば自動的に適切な運用になるわけではありません。自社で情報の管理責任者、更新方法、閲覧範囲などを整理しておくことが重要です。
4.既存システムとの連携を確認する
金融機関の人事業務では、給与、勤怠、労務など複数のシステムを利用しているケースも考えられます。
そのため、人事管理システムを選ぶ際には「何ができるか」だけでなく、「現在使っているシステムとどのように情報を受け渡せるか」を確認しましょう。
連携方法や対応範囲はサービスごとに異なるため、導入前に公式情報や提供会社への確認が必要です。
金融機関の人事管理システムを選ぶときの確認項目
人事管理システムを検討する場合は、単純に機能数だけで比較するのではなく、自社の人事業務に必要な情報を継続的に管理・活用できるかを確認します。
| 確認項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 従業員情報 | 必要な管理項目を登録・更新できるか |
| 組織管理 | 組織図や組織構成を管理できるか |
| 履歴管理 | 過去の組織や異動情報を確認できるか |
| 人材配置 | 異動・配置の検討に利用できるか |
| ワークフロー | 人事情報の申請・承認を効率化できるか |
| 権限管理 | 利用者ごとに適切な管理範囲を設定できるか |
| 連携 | 既存の人事・労務関連システムとの連携方法を確認できるか |
| 導入支援 | 初期設定や運用設計についてどこまで支援されるか |
| セキュリティ | 自社のセキュリティ要件を満たせるか |
| 料金 | 基本料金と追加費用の範囲を確認できるか |
特に金融機関の場合、扱う情報の範囲や社内の権限管理方針などを踏まえ、自社の要件を整理したうえで比較することが大切です。
人事管理システム導入前のチェックリスト
- 従業員情報を一元管理する必要があるか
- 過去の異動・組織履歴を確認する必要があるか
- 組織図を人材配置の検討に利用したいか
- 管理項目を自社の業務に合わせて設定したいか
- 申請・承認業務を効率化したいか
- 現在利用しているシステムとの連携が必要か
- 既存データをどのように移行するか決まっているか
- 閲覧・編集権限をどのように設定するか整理できているか
- 導入後の運用担当者を決めているか
- 料金やオプションの範囲を確認しているか
サイレコで金融機関の人事情報を一元管理する
金融機関の人事で、人材配置や組織管理のために人事情報を一元化したい場合は、HRオートメーションシステム「サイレコ」も選択肢の一つです。
サイレコは、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するクラウド型人事管理システムです。
公式の機能紹介では、従業員管理、組織図、組織構成の履歴検索、人事異動シミュレーション、評価、申請承認・ワークフロー、情報の集計・可視化などの機能が案内されています。
従業員情報を一元管理する
サイレコでは、従業員管理の管理項目をカスタマイズでき、複数の人事情報を一元管理できます。
また、CSVファイルによる一括登録などにも対応しているため、既存の人事情報を整理したうえで登録する方法も検討できます。
ただし、実際にどの情報を登録するか、どの情報を正本とするか、誰が更新するかなどの運用ルールは、自社で整理する必要があります。
組織図や異動履歴を人材配置に活用する
サイレコでは、組織図の作成・管理に加えて、現在・過去の組織構成を確認できる機能や、人事異動シミュレーションの機能が案内されています。
そのため、人材配置や組織変更を検討する際に、組織情報を確認しながら検討する環境を整えることができます。
金融機関のように組織・人材の情報を継続的に扱う企業では、現在の情報だけでなく、過去の組織や異動履歴を確認できることも、システム選定時の確認ポイントになります。
人事情報を集計・可視化する
サイレコでは、管理項目をカスタマイズでき、管理している情報の集計や経年変化の可視化が可能と案内されています。
人材配置や育成などにデータを活用するためには、情報を保存するだけでなく、必要な情報を取り出し、比較・確認できる状態にすることが重要です。
申請・承認などの人事業務を効率化する
サイレコには申請承認・ワークフローの機能があり、従業員情報の変更などに関する申請・承認をシステム上で管理できます。
人事情報を更新する業務では、入力・確認・承認・反映といった複数の工程が発生する場合があります。こうした定型業務を整理し、システム上で処理することは、人事業務の効率化を検討する際の選択肢になります。
金融機関の人事管理を見直すなら、まず「人」と「情報」の状態を整理する
金融機関の人事では、専門人材の確保・育成、人材配置、多様な人材の活用など、人材戦略に関わるテーマが広がっています。
そのため、人事担当者が持つ役割も、単に従業員情報を管理するだけではなく、蓄積した情報を人材配置や育成、組織づくりなどの意思決定に活用する方向へ広がっています。
人事DXを進める際には、最初からシステム導入を目的にするのではなく、次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 現在の人事業務と情報の所在を整理する
- 人材配置・育成など、データを活用したい業務を決める
- 必要な管理項目と更新ルールを整理する
- 権限・セキュリティ要件を整理する
- 既存システムとの連携方法を確認する
- 自社の要件に合う人事管理システムを比較する
特に重要なのは、「どのシステムを導入するか」より先に、「人事情報を何のために使うのか」を決めることです。
人事情報を単なる管理データとして保管するのではなく、適切な人材配置や育成、組織づくりなどに活用できる状態を整えることで、人事部門が経営や現場の意思決定を支える基盤をつくりやすくなります。
まとめ|金融機関の人事では人材データを戦略につなげることが重要
金融機関の人事では、採用や労務管理だけでなく、専門人材の確保・育成、人材配置、多様な人材の活用など、幅広い人材戦略への対応が求められています。
こうした人材戦略を進めるには、従業員の所属や役職、異動履歴、評価などの情報を適切に管理し、必要なときに確認・活用できる状態をつくることが重要です。
人事DXを進める際は、まず現在の業務やデータの所在を整理し、どのような人事判断にデータを活用したいのかを明確にしましょう。そのうえで、必要な機能、権限、セキュリティ、既存システムとの連携、導入支援などを比較して、自社に合った人事管理システムを検討することが大切です。
サイレコについて詳しく知りたい方へ
サイレコでは、従業員情報の一元管理、組織図・組織履歴、人事異動シミュレーション、申請承認・ワークフロー、人事評価、人事情報の集計・可視化など、人事情報の管理・活用に関する機能を提供しています。
よくある質問
金融機関の人事では何が重視されますか?
金融機関の人事では、採用や労務管理に加えて、専門人材の確保・育成、人材配置、多様な人材の活用など、人材戦略に関する取り組みが重要になっています。日本銀行も、金融機関の業務の多様化・専門分化を背景に、多様な専門人材の確保が必要になっていると説明しています。
金融機関でも人事DXは必要ですか?
すべての金融機関に同じ方法で人事DXが必要とは限りません。ただし、人事情報が複数のExcelやシステムに分散している、人材配置のたびに情報を探す必要があるなどの課題がある場合は、業務とデータの整理、人事管理システムの活用などを検討する余地があります。
金融機関の人事管理システムでは何を確認すべきですか?
従業員情報の管理、組織図、異動履歴、人材配置への活用、申請・承認、権限管理、セキュリティ、既存システムとの連携、導入・運用支援などを確認するとよいでしょう。自社の人事業務で何を改善したいのかを先に整理してから比較することが重要です。
人事データを一元管理すれば戦略人事を実現できますか?
人事データを一元管理するだけで戦略人事が実現するわけではありません。データを何の判断に利用するのかを明確にし、管理項目、更新ルール、権限、分析方法、実際の人事施策まで設計する必要があります。システムは、その運用を支える基盤として検討することが重要です。
参考資料・公式情報