人事マスタとは、社員番号を軸に、従業員の基本情報や所属、役職、雇用情報などを統一した形式で管理する基礎データです。
Excelで人事マスタを作る場合は、すべての情報を一つの表に詰め込むのではなく、「従業員情報」「組織・コード」「項目定義」「変更履歴」などに分けると管理しやすくなります。あわせて、入力形式、更新担当者、閲覧権限を決めることも重要です。
本記事では、Excelへコピーして使える人事マスタのテンプレートを示し、必要項目の選び方や作成・更新手順、個人情報を扱う際の注意点を解説します。
人事マスタとは、人事業務で共通利用する基礎データ
人事マスタとは、従業員に関する情報を一定の形式で整理し、人事・労務業務で共通利用できるようにした基礎データです。
人事マスタに含める情報は、企業の利用目的によって異なります。一般的には、次のような業務で参照する情報を管理します。
- 入社・退職手続き
- 社会保険や給与計算
- 組織図の作成
- 人事異動
- 雇用契約の管理
- 社内の人員集計
- 人事評価や人材配置
- 勤怠・給与・人事システム間のデータ連携
人事マスタは法律上の正式名称ではありません。そのため、「必ずこの項目を登録しなければならない」という一律の決まりはなく、自社の業務に必要な項目を選んで設計します。
ただし、人事マスタに氏名や住所、生年月日などを登録する場合は、個人情報として適切に取り扱う必要があります。また、人事マスタを法定帳簿である労働者名簿としても利用する場合は、労働基準法上の要件を別途確認しなければなりません。
人事マスタと人事台帳・労働者名簿の違い
人事マスタ、人事台帳、労働者名簿は、実務上同じような意味で使われることがありますが、法律上の位置づけは異なります。
| 比較項目 | 人事マスタ | 人事台帳 | 労働者名簿 |
|---|---|---|---|
| 法律上の位置づけ | 法令上の名称ではない | 法令上の名称ではない | 労働基準法に基づく法定帳簿 |
| 主な目的 | 複数の人事業務やシステムで共通利用する | 従業員情報を一覧・個人単位で管理する | 労働者の雇用状況を記録する |
| 主な内容 | 社員番号、所属、役職、雇用区分など | 基本情報、雇用情報、異動・資格・研修履歴など | 氏名、生年月日、履歴、住所、雇入年月日などの法定項目 |
| 管理形式 | Excel、データベース、人事管理システム | 紙、Excel、人事管理システム | 紙または一定の要件を満たす電子データ |
労働基準法第107条では、使用者は原則として各事業場に労働者名簿を備え、必要事項に変更があった場合は遅滞なく訂正することが定められています。
人事マスタに労働者名簿の法定項目が含まれていても、必要事項をすぐに表示・提出できない場合や、対象者・事業場の管理方法が要件を満たしていない場合は、労働者名簿として適切とは限りません。労働者名簿の詳しい要件は、厚生労働省の情報や「人事台帳とは?必要項目・保存期間とExcelやシステムで管理する方法」も確認してください。
人事マスタのExcelテンプレート
以下は、Excelで人事マスタを作成するときの基本的なテンプレートです。表をExcelにコピーし、自社の利用目的に合わせて項目を追加・削除してください。
| 社員番号 | 在籍区分 | 氏名 | 氏名カナ | 入社日 | 退職日 | 会社コード | 事業所コード | 部署コード | 役職コード | 雇用区分コード | 適用開始日 | 更新日 |
| E0001 | 在籍 | 人事 太郎 | ジンジ タロウ | 2026/04/01 | C01 | T01 | D010 | P03 | K01 | 2026/04/01 | 2026/04/01 |
この入力内容は形式を示すための例です。実在する従業員の情報ではありません。
人事マスタを他のシステムへ取り込む予定がある場合は、導入予定のシステムが指定する項目名、文字数、日付形式、使用可能文字なども確認してください。
テンプレートは4つのシートに分ける
Excelで人事マスタを管理するときは、次の4シートに分けると、項目の意味や変更履歴を整理しやすくなります。
| シート名 | 管理する内容 |
| 従業員マスタ | 社員番号、氏名、在籍区分、所属、役職、雇用区分など |
| 組織・コードマスタ | 部署、役職、雇用区分、事業所などのコードと名称 |
| 項目定義 | 項目の意味、入力形式、必須・任意、更新元、管理責任者など |
| 変更履歴 | 変更日、対象社員、変更項目、変更前後の値、更新者など |
一つのシートに現在の情報とすべての履歴を詰め込むと、同じ従業員が複数行に現れ、どの情報が現在値なのか分かりにくくなります。
従業員マスタには原則として現在有効な情報を登録し、過去の所属や役職は変更履歴シートなどで管理する方法が分かりやすいでしょう。
人事マスタの必要項目
人事マスタには、利用する可能性のある情報を無条件に追加するのではなく、項目ごとに利用目的を確認することが大切です。
まずは日常業務で共通して参照する項目に絞り、必要になった段階で追加する方法が適しています。
従業員の基本情報
基本情報は、人事マスタで従業員を識別し、在籍状況を確認するための項目です。
| 項目 | 入力例 | 設定時のポイント |
| 社員番号 | E0001 | 重複しない番号を付ける |
| 在籍区分 | 在籍 | 在籍、休職、退職などの選択肢を統一する |
| 氏名 | 人事 太郎 | 姓名の間の空白など入力形式を決める |
| 氏名カナ | ジンジ タロウ | 全角・半角を統一する |
| 生年月日 | 1990/01/01 | 利用目的と閲覧者を確認する |
| 入社日 | 2026/04/01 | 日付形式を統一する |
| 退職日 | 在籍中は空欄にするなどルールを決める | |
| メールアドレス | example@example.jp | 社用と個人用を区別する |
社員番号は、従業員を識別するためのキーになります。給与、勤怠、人事評価など複数のシステムで共通利用する場合は、システムごとに異なる番号を付けないよう、採番ルールを整理しましょう。
退職者の社員番号を新入社員へ再利用すると、過去の給与情報や評価情報が別人にひもづくおそれがあります。原則として、一度発行した社員番号は再利用しない運用が適しています。
所属・役職・雇用情報
所属や雇用情報は、人員集計、組織図、人事異動、給与・勤怠システムとの連携などに利用します。
| 項目 | 入力例 | 設定時のポイント |
| 会社コード | C01 | グループ会社を識別する |
| 事業所コード | T01 | 名称とは別に固定コードを設定する |
| 部署コード | D010 | 組織改編時の扱いを決める |
| 役職コード | P03 | 役職名の表記揺れを防ぐ |
| 雇用区分コード | K01 | 正社員、契約社員などをコード化する |
| 入社区分 | 新卒 | 選択肢をあらかじめ定義する |
| 契約開始日 | 2026/04/01 | 有期契約の場合に使用する |
| 契約終了日 | 2027/03/31 | 契約更新時の変更方法を決める |
| 適用開始日 | 2026/04/01 | 現在値が有効になった日を登録する |
「営業部」「営業本部」「第一営業部」のように担当者ごとに異なる名称を入力すると、部署別の集計が正しく行えません。部署、役職、雇用区分などはコードマスタを作り、プルダウンから選択できるようにします。
利用目的と閲覧者を確認して追加する項目
次の情報は、人事・労務業務で必要になることがありますが、全従業員の情報を一律に登録するとは限りません。
- 住所
- 電話番号
- 緊急連絡先
- 家族・扶養情報
- 給与・報酬情報
- 社会保険に関する情報
- 健康情報
- 障害に関する情報
- 人事評価
- 資格・スキル
- 研修履歴
- 懲戒に関する情報
個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人データについて、データ内容の正確性の確保、安全管理措置、従業者や委託先の監督などが示されています。人事マスタへ項目を追加するときは、「念のため集める」のではなく、取得・利用する目的と、閲覧・編集できる担当者を明確にしましょう。
特に健康情報、障害に関する情報などは、要配慮個人情報に該当する可能性があります。人事マスタの一般項目と同じ権限で閲覧できる状態にせず、取得根拠や管理方法を個別に検討する必要があります。
詳しくは、個人情報保護委員会のガイドライン通則編を確認してください。
マイナンバーは通常の人事マスタに安易に追加しない
マイナンバーは、社会保障、税、災害対策のうち、法令または条例で定められた事務に限って利用できます。
一般的な人員集計、組織図の作成、人事評価、人材配置などを目的とする人事マスタへ、マイナンバーを共通項目として追加することは避けましょう。取り扱う場合は、利用目的、取扱担当者、保管場所、アクセス制御、廃棄方法などを定め、通常の人事マスタと分けて管理することを検討します。
具体的な管理方法は、個人情報保護委員会の特定個人情報に関するガイドラインで確認できます。
人事マスタの入力ルール
人事マスタは、項目がそろっていても、担当者ごとに入力方法が異なると正確に集計できません。作成時に、少なくとも次のルールを決めておきましょう。
| 対象 | ルール例 |
| 社員番号 | 重複禁止、退職後も再利用しない |
| 日付 | YYYY/MM/DDに統一する |
| 氏名 | 姓と名の間に全角スペースを入れる |
| 氏名カナ | 全角カタカナに統一する |
| コード | 半角英数字とし、桁数を統一する |
| 未登録値 | 空欄、未確認、該当なしを区別する |
| 部署・役職 | コードマスタから選択する |
| 退職者 | 行を削除せず在籍区分と退職日を更新する |
| 変更履歴 | 変更日、変更前後の値、更新者を記録する |
「空欄」が未確認を意味するのか、該当しないことを意味するのかが不明だと、データの欠損を正しく判断できません。「未確認」「該当なし」「回答なし」などを区別する必要がある項目は、それぞれの入力値を定義します。
項目定義書を作成する
Excelの別シートに、次のような項目定義書を用意しましょう。
| 項目名 | 定義 | 形式 | 必須・任意 | 更新元 | 更新契機 | 管理責任者 | 機密区分 |
| 部署コード | 主所属部署を示すコード | 半角英数字5桁 | 必須 | 人事発令 | 人事異動時 | 人事部 | 社内限定 |
| 契約終了日 | 現在の雇用契約が終了する日 | YYYY/MM/DD | 条件付き必須 | 雇用契約書 | 契約更新時 | 労務担当 | 関係者限定 |
項目定義書があれば、担当者が変わっても入力方法を引き継ぎやすくなります。人事管理システムへ移行するときも、項目の意味やデータ形式を確認する資料として利用できます。
Excelで人事マスタを作成・管理する5つの手順
人事マスタは、テンプレートに従業員情報を入力するだけでは完成しません。誰が、いつ、どの情報を更新するかまで決める必要があります。
1.利用目的と参照先を洗い出す
最初に、人事マスタを利用する業務とシステムを整理します。
例えば、組織図の作成だけが目的なら、住所や家族情報は必要ありません。一方、給与・社会保険手続きにも利用する場合は、より多くの情報が必要になります。
次の内容を一覧にしましょう。
- 人事マスタを利用する業務
- 情報を参照する部門
- 情報の取得元
- データを連携するシステム
- 出力する帳票
- 更新が発生する場面
利用目的を先に決めることで、不要な個人情報を集めたり、同じ情報を複数のExcelで管理したりする状態を避けやすくなります。
2.必要項目と入力形式を決める
利用目的ごとに必要な項目を選び、項目定義書を作成します。
既存のExcelやシステムから項目を集める場合は、名前が異なっていても同じ意味を持つ項目がないか確認します。「社員番号」と「従業員コード」、「所属」と「主務部署」などの関係を整理し、標準となる名称を一つ決めましょう。
この段階で、必須・任意、文字数、日付形式、選択肢、更新元、管理責任者も定義します。
3.既存データを整理して少人数で試す
既存データを移す前に、次のような不備を確認します。
- 社員番号の重複
- 氏名や部署名の表記揺れ
- 入社日などの必須情報の欠損
- 退職者が在籍扱いになっている
- 廃止された部署・役職が残っている
- 日付が文字列と日付形式で混在している
- 一つのセルに複数の情報が入力されている
最初から全従業員分を登録せず、雇用形態や所属が異なる数人分で試します。検索、並べ替え、集計、他システムへの取込みまで確認したうえで、全体へ展開しましょう。
4.更新の契機と担当者を決める
人事マスタは、作成後の更新が滞ると実務で利用できなくなります。
少なくとも、次の場面について更新手順を決めておきます。
| 更新契機 | 主な更新項目 |
| 入社 | 社員番号、氏名、所属、役職、雇用区分、入社日 |
| 人事異動 | 部署、役職、適用開始日 |
| 昇格・降格 | 役職、等級、適用開始日 |
| 雇用契約の更新 | 契約開始日、契約終了日、雇用区分 |
| 住所・氏名変更 | 住所、氏名、氏名カナ |
| 休職・復職 | 在籍区分、休職・復職日 |
| 退職 | 在籍区分、退職日 |
申請者、承認者、更新担当者、更新期限を明確にし、変更履歴を残します。労働者名簿として使用する情報に変更が生じた場合は、遅滞なく訂正する必要がある点にも注意してください。
5.定期的にデータと権限を点検する
月次、年度更新時、組織改編時などに、次の点を確認します。
- 重複している社員番号がないか
- 必須項目に空欄がないか
- 在籍区分と退職日の内容が一致しているか
- 廃止した部署コードが使われていないか
- 契約終了日を過ぎたデータがないか
- 退職者や異動者に不要な閲覧権限が残っていないか
- 不要になった個人情報を保存し続けていないか
- バックアップから復旧できるか
Excelファイルへパスワードを設定するだけで、すべての安全管理措置が完了するわけではありません。保存場所、アクセスできる人、端末への保存・持ち出し、バックアップ、操作ルール、従業者への教育などを含めて管理する必要があります。
Excel管理を続けるか、人事管理システムへ移行するか判断する
Excelは、管理項目や更新担当者が少なく、利用範囲が限られている場合に使いやすい方法です。一方、従業員数だけを基準に、Excelと人事管理システムのどちらが適切かを決めることはできません。
次のような状態が増えた場合は、人事管理システムへの移行を検討する目安になります。
- 部署や担当者ごとに異なるファイルがある
- どのファイルが最新版か分からない
- 同じ情報を複数のシステムへ転記している
- 入社、異動、住所変更などの更新漏れが起きる
- 更新できる人と閲覧だけできる人を分けたい
- 過去の所属や役職を時点別に確認したい
- 人事情報を組織図や人員集計へ利用したい
- Excelの編集・変更履歴だけでは追跡が難しい
- 勤怠・給与などの関連システムと連携したい
クラウド型の人事労務サービスを利用する場合も、サービス事業者へ任せるだけではなく、委託先の選定・監督や安全管理措置を確認する必要があります。個人情報保護委員会は、クラウド型の人事労務管理サービスを提供・利用する場合の留意点を公表しています。詳しくは、個人情報保護委員会の注意喚起を確認してください。
人事管理システムの基本的な機能や導入時の注意点については、「人事管理システムとは?主な種類・機能や導入のメリットを解説」でも紹介しています。
サイレコでは管理項目のカスタマイズとCSV一括登録ができる
HRオートメーションシステム「サイレコ」は、組織人事の情報を蓄積し、経営情報としての活用を支援するクラウド型人事管理システムです。
サイレコでは、従業員情報を一元管理できるほか、管理項目を自社に合わせてカスタマイズできます。複数のシステムで管理している情報をCSVファイルで一括登録する機能や、情報の一括入力、入力テンプレートの保存にも対応しています。
Excelで整理した人事マスタについて、複数ファイルの統合、閲覧・更新範囲の管理、組織情報との連動まで行いたい場合は、サイレコの機能紹介をご確認ください。
なお、既存のExcelをそのまま取り込めるとは限りません。移行時には、項目名、形式、重複、欠損、コード体系などを確認し、利用する機能や導入条件をサイレコの担当者へ確認してください。
まとめ|テンプレートと更新ルールをセットで整備する
人事マスタは、社員番号をキーとして、従業員の基本情報や所属・役職、雇用情報を統一した形式で管理する基礎データです。
Excelで作成するときは、従業員マスタだけでなく、組織・コードマスタ、項目定義、変更履歴を分けて整備しましょう。利用目的、入力形式、更新担当者、更新契機、閲覧権限まで決めることで、日常業務やシステム移行に利用しやすくなります。
まずは本記事のテンプレートを参考に、自社で共通利用する項目を洗い出してください。ファイルや更新担当者が増え、履歴・権限・システム連携の管理が難しくなっている場合は、人事管理システムへの移行も選択肢になります。