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絶対評価と相対評価の違いとは?評価制度設計で失敗しない人事評価の考え方

人事評価は、社員の処遇を決めるだけでなく、モチベーションやエンゲージメント、ひいては業績にも直結する重要な仕組みです。その設計に欠かせないのが「絶対評価」と「相対評価」の考え方ですが、「違いはなんとなく知っているが、結局どちらが正解か分からない」「現場からは不満が多く、評価制度を見直したい」と悩む人事・経営者は少なくありません。
本記事では、人事評価制度の設計・運用に携わってきた専門家の視点から、絶対評価と相対評価の定義やメリット・デメリット、自社に合う使い分け方、組み合わせによる最適化のポイントまでを体系的に整理します。単なる評価手法の比較にとどまらず、「公平性」と「納得感」を両立させながら、社員の成長と組織のパフォーマンス向上につなげる評価制度設計の実務ステップも解説します。

絶対評価・相対評価とは?人事評価制度の基本を整理する

人事評価制度の役割と目的を再確認する

人事評価制度は、単に昇給・賞与・昇格といった「査定」のためだけの仕組みではありません。社員一人ひとりの業績や行動を見える化し、 その結果をもとに育成や配置、キャリア形成の支援につなげるための基盤でもあります。また、評価制度を通じて「自社がどのような行動や 成果を重視しているか」を明確にすることで、エンゲージメント向上や人材の定着にも大きな影響を与えます。

さらに、経営戦略や事業計画と連動させることで、「どのポジションにどのような人材が必要か」「中長期的にどのスキルを強化すべきか」 といった人材ポートフォリオの検討にも活用できます。人的資本経営が重視される今、人事評価制度は企業の競争力を支える重要な マネジメントツールといえます。

絶対評価の定義 ― 基準に対する達成度で評価する方法

絶対評価とは、あらかじめ定めた評価基準や目標に対して、どの程度達成しているかをもとに評価する方法です。評価対象者同士を比較する のではなく、「基準」と「個人」の関係で評価が決まる点が特徴です。例えば、「期初に設定した売上目標の達成率」や「期待される役割 行動への到達度」など、明確な物差しを用いて評価を行います。

実務では、5段階評価や7段階評価などのレーティングスケールを用い、「期待を大きく上回る/概ね期待通り/改善が必要」といった形で コンピテンシーを評価するケースが一般的です。また、目標管理制度(MBO)と組み合わせ、期初に設定した目標に対する達成度を評価する 方法も多くの企業で採用されています。絶対評価は、評価理由を説明しやすく、個々人の成長を確認しやすい評価手法です。

相対評価の定義 ― 集団内の順位・分布で評価する方法

相対評価とは、評価対象者同士を比較し、集団内での相対的な順位や分布に基づいて評価ランクを決定する方法です。「誰が最も成果を 上げたのか」「全体の中でどの位置にいるのか」といった観点で評価が決まる点が特徴です。例えば、営業部門であれば、年間売上や 目標達成率を並べ、上位○%をS評価、次の○%をA評価といった形で評価分布を決めます。

このとき、あらかじめ「S評価5%、A評価20%、B評価50%、C評価20%、D評価5%」のように評価分布を設計しておくことで、評価結果に メリハリを持たせることができます。一方で、全体の水準が高い年には「目標を達成した人」同士でも評価差がつくことがあり、 説明や納得感の確保が課題となる場合もあります。相対評価は、評価のバラつきを抑えやすい一方で、運用には丁寧なコミュニケーションが 求められる評価手法です。

絶対評価の仕組みと具体例:どんな場面に向いているのか

営業部門の絶対評価例 ― 目標達成率に基づくランク付け

絶対評価の典型例として、営業部門での「目標達成率」に基づく評価があります。たとえば、以下のように達成度に応じた ランク付けを行うケースが一般的です。

  • 101%以上:Aランク
  • 81〜100%:Bランク
  • 61〜80%:Cランク
  • 60%以下:Dランク

この方式では、全員が基準を上回れば全員がA評価となる可能性があり、好況期や市場の追い風が強い時期にはA評価が多く発生します。 これは、評価が「個々の基準到達度」によって決まるためであり、相対評価と異なり、他者との比較でランクが決まらない点が特徴です。

バックオフィス・専門職における絶対評価の設計例

経理・人事・総務・開発・法務など、バックオフィスや専門職の業務は数値だけで評価しにくいため、絶対評価では複数の観点を 組み合わせて評価指標を設計します。具体例としては次のような方法があります。

  • KPI(例:処理件数、エラー率、対応スピード)
  • コンピテンシー評価(例:課題発見力、協働性、専門知識の活用)
  • プロジェクトの完了状況・成果物の品質

これらを「成果(What)」と「行動・プロセス(How)」に分けて評価することで、数値に表れにくい業務の質や専門性も適切に評価できます。 また、MBO(目標管理制度)を組み合わせ、期初に設定した目標への到達度を軸にするケースも多く見られます。

絶対評価のメリット ― 説明責任と個人の成長に向き合いやすい

絶対評価の大きなメリットは「評価理由を説明しやすい」点にあります。あらかじめ設定された基準に対する達成度で評価が決まるため、 社員は「なぜその評価になったのか」を具体的に理解しやすく、納得感が生まれやすくなります(HRBrain | 顧客満足度No.1のタレントマネジメントシステムなどでも強調されるポイントです)。

また、個々の成長度合いを評価しやすい点も特徴です。他者との比較ではなく「自分が前回からどれだけ成長したか」が評価に反映されるため、 社員自身も改善に向き合いやすく、育成施策・1on1・研修設計との相性も良い評価手法といえます。

絶対評価のデメリット ― 基準設計の難しさと「中庸」への偏り

絶対評価の代表的な課題は「評価基準の設計が難しい」ことです。基準が甘すぎればA評価が乱発され、厳しすぎればモチベーションを下げてしまいます。 特に、ダイレクトソーシングなどでも言及されるように、評価基準が曖昧だと運用が属人化しやすい点は大きなリスクです。

さらに、評価者が「無難な評価(真ん中)に寄せがち」になる傾向も指摘されています。明確な基準に沿って評価しているつもりでも、 定性的な項目になるほど「どちらとも言えない」という評価に集中しやすく、結果として評価が平準化してしまうケースが多く見られます。

これらのデメリットを抑えるためには、評価基準を行動例・成果物・数値例を用いて具体的に記述することや、評価者トレーニング・ キャリブレーション(評価すり合わせ)の実施が欠かせません。

相対評価の仕組みと具体例:競争をどうマネジメントするか

営業部門の相対評価例 ― 達成率ランキングによる格付け

相対評価の代表例として「達成率ランキング」による評価が挙げられます。営業組織では特に取り入れられるケースが多く、 年間の売上・目標達成率を並べて順位を算出し、その順位によって評価ランクを決める方法です。

  • 1〜20位:Aランク
  • 21〜50位:Bランク
  • 51〜80位:Cランク
  • 81位以下:Dランク

この方式では、全員が100%以上の目標達成をしていたとしても、あくまで「組織内の順位」でランクが決まるため、評価差が生まれます。 そのため、好況期や市場の追い風が強い年であっても、評価は自動的に分布に沿って振り分けられるという構造が特徴です。

相対評価のメリット ― 公平性とメリハリのある評価分布

相対評価の大きなメリットは「評価者によるバラつきを抑えやすい」点にあります。絶対評価では評価者の基準が異なることで評価結果が ばらつきやすくなりますが、相対評価では最終的に「順位」によって評価を決定できるため、一定の公平性を担保しやすくなります。 これは、あしたのチームなどの人事評価サービスでも強調されるポイントです。

また、順位付けにより強制的に分布を作れるため、評価にメリハリがつきやすく、「成果を出した人には高評価を付けたい」 「甘め評価を避けたい」といった組織で特に有効です。評価者も、基準設定に悩む負担が軽くなり、評価業務がスムーズに進みやすくなります。

相対評価のデメリット ― 説明の難しさと過度な競争リスク

相対評価の課題は「評価理由を説明しにくい」点です。たとえ本人が100%達成していても、他のメンバーの成績が良ければ評価が下がります。 その際に「周りがもっと良かったから」という理由では、納得感を得ることは難しく、ダイレクトソーシングなどの専門サービスでも この点がよく課題として指摘されています。

さらに、評価が順位で決まるため、新人・若手・育成対象者にとっては努力や成長が評価に反映されにくいという側面があります。 また、競争が過度に強くなると、チームワークを損なったり、情報共有が消極的になるなどの逆効果が生じるリスクもあります。

こうしたリスクを回避するには、相対評価に加えて「協働性」「チーム貢献度」などの項目を別枠で評価したり、新人層のみ別グループで 相対評価を行うなど、設計上の工夫が不可欠です。

絶対評価と相対評価の違い|比較表で押さえる設計のポイント

定義・評価軸の違いを整理する比較表

絶対評価と相対評価の違いを端的に整理すると、「基準で評価するか」「順位で評価するか」の違いです。 カオナビなどのHRサービスでも、この2つの手法は評価制度設計の基礎として明確に区別されます。 以下の表に、定義と評価軸の違い、設計上のポイントをまとめました。

項目絶対評価相対評価
評価の軸事前に定めた基準・目標に対する達成度で評価組織内の順位・分布に応じて評価
評価の決まり方基準との比較で評価が決定他者との相対的な位置づけで評価が決定
評価期間の特徴中長期の育成や成長評価に向く短期成果の比較・メリハリ付けに向く
評価者現場マネジャーや一次・二次評価者が中心三次評価者や経営層・人事が最終調整で関与
適用しやすい職種バックオフィス・専門職・企画職など営業・販売など成果が比較しやすい職種

このように、どちらも「良し悪し」ではなく「向き・不向き」が存在します。自社の事業モデル・役割構造に合わせた使い分けが重要です。

メリット・デメリットの比較表(人事/現場/社員それぞれの視点)

絶対評価と相対評価を比較する際には、「誰にとってのメリットか?」という視点が欠かせません。 人事・現場マネジャー・社員の三者で感じるメリットとデメリットは大きく異なります。 以下に、主な比較ポイントを整理しています。

視点絶対評価のメリット/デメリット相対評価のメリット/デメリット
人事・評価理由を説明しやすい
・育成・配置に活用しやすい
・ただし評価基準の設計・更新が負荷大
・人件費コントロールが容易
・分布管理でメリハリを作れる
・ただし納得感の担保が課題
現場マネジャー・個人の努力や成長を評価しやすい
・説明しやすいフィードバックが可能
・無難な評価に寄りがち
・順位付けで評価しやすい
・評価のバラつきを抑えやすい
・個々の成長を反映しづらい
社員・評価基準が明確で納得しやすい
・成長実感を得やすい
・基準が曖昧だと不公平感へ直結
・競争が刺激になる場合もある
・成果が出ても順位で評価が下がる不満
・心理的安全性を損なうリスク

この比較からわかるように、評価制度は「どこを重視するか」によって設計がまったく変わります。 人事側の合理性と、現場の運用負荷、社員の納得感──これらのバランス設計が鍵です。

よくある誤解と「どちらか一方が正解」という発想のリスク

近年、「相対評価は時代遅れ」「絶対評価こそあるべき姿」といった極端な議論を見かけることがあります。 しかし、ミイダスなどのHRサービスでも繰り返し示されている通り、評価制度に絶対的な正解はありません。

たとえば、スタートアップなど急成長フェーズでは成果のメリハリをつけたい場合、相対評価が効果を発揮します。 一方、専門職中心の組織や中長期の育成を重視する企業では、絶対評価がフィットしやすい傾向があります。

逆に、自社の戦略・人材構造を無視して手法だけを導入すると、「評価が形骸化する」「納得感が下がる」 「昇給原資と整合しない」といった失敗につながります。

重要なのは、自社の目的・フェーズ・課題に基づいて、絶対評価と相対評価を使い分ける、または組み合わせることです。

評価制度設計でよくある失敗パターンと「ズレ」が起こる理由

経営メッセージと評価項目がバラバラになっている

評価制度の失敗で最も多いのが、「経営が求める姿」と「評価項目」が一致していないケースです。 例えば、経営が「イノベーションを重視する」「挑戦を奨励する」と宣言しているにもかかわらず、 実際の評価項目は減点型・保守的な行動を評価する内容が中心になっている企業も少なくありません。

また、売上・利益・事業貢献に紐づかない項目ばかりが評価表に並び、報酬や昇格と結びつかない状態では、 社員は「何を頑張れば評価されるのか」が分からず、評価制度への信頼が低下します。 この“経営と評価のズレ”は、多くの企業で起こる典型的な失敗パターンです。

評価基準が曖昧で、評価者ごとに「物差し」が違う

絶対評価の設計で頻発するのが、評価基準(グレード定義)が曖昧なまま運用が始まってしまうことです。 「期待通り」「期待を超える」といった表現だけでは、評価者によって解釈が大きく異なります。

その結果、同じレベルの成果を出していても、評価者Aは高評価、評価者Bは中評価など、 「評価者によるバラつき」が顕著になるリスクがあります。

この状態で期末を迎えると、最後は評価分布を合わせるために相対評価で微調整する “なんちゃって評価制度”に陥りがちです。評価制度の形だけは絶対評価だが、 実態は相対評価に近い──というケースは非常に多く見られます。

評価分布・昇給原資との整合が取れていない

相対評価は分布管理により人件費コントロールがしやすい一方で、社員の納得感を損なうリスクがあります。 プラスアルファ・コンサルティングなどでも指摘されるように、成果を出しても 「分布の関係で評価を下げざるを得ない」状況は、社員の不満の大きな要因になります。

逆に絶対評価のみで運用すると、好況期や基準設定の甘さによってA評価が大量に発生し、 想定以上に昇給・賞与コストが膨らむリスクがあります。

評価制度は「人件費管理(PoL:Payroll)」と切り離せないため、評価分布や原資との整合を考えずに制度だけ導入すると、 運用が破綻する典型的な失敗につながります。

フィードバックと育成につながらない「一方通行の評価」

評価制度が形骸化する大きな理由が、評価が“通告するだけ”で終わってしまうことです。 評価会議だけが白熱し、当の本人には評価理由が十分に説明されないケースは珍しくありません。

本来、評価は「成長につなげる対話」が前提ですが、1on1・キャリア面談・育成計画と連動していないと、 評価はただの“年に一度のイベント”になってしまいます。

社員からすると「結局、何をすれば評価が上がるのか分からない」という状態に陥り、 モチベーションの低下・離職リスクの増加につながります。

評価制度の価値を最大化するためには、評価 → フィードバック → 翌期目標 → 育成施策という 一連のサイクルをつなげる必要があります。

自社に合う評価手法の選び方:業種・規模・人材ポートフォリオ別

業種別の考え方 ― 売上直結型 vs プロジェクト型 vs 専門職

評価制度は「業種・職種の特徴」によって向き・不向きが大きく異なります。 まず押さえておきたいのは、売上直結型の業務か、プロジェクト型の業務か、専門性重視の職種かという点です。

● 営業組織:相対評価が機能しやすい
売上や達成率など成果が数字で可視化されやすいため、相対評価によるインセンティブ効果が出やすい領域です。 「順位による評価」「上位〇%を高評価にする」など、競争が組織の活性化につながるケースがあります。

● 研究開発・クリエイティブ職:絶対評価が向いている
成果がすぐに売上として表れない、プロセスや創造性が重視される職種は、個々の専門性や貢献度を評価する絶対評価が適しています。 プロジェクトの達成度、アウトプットの質、技術的チャレンジなどを軸に評価する必要があります。

● バックオフィス(経理・人事・総務など):絶対評価が機能しやすい
定量化しにくい業務が多いため、KPI・コンピテンシー・業務品質などを組み合わせた絶対評価が有効です。

企業規模・成長フェーズ別の選び方

評価制度は「会社の規模」「組織の成熟度」「成長フェーズ」によっても適切な設計が大きく変わります。

● スタートアップ・中小企業
・評価基準を作り込みすぎると運用できなくなるリスクが高い ・まずは「シンプルな絶対評価(MBO中心)」にし、バラつきが出る部分を相対評価で軽く調整する方法が現実的 ・人数が少ないため、相対評価が組織文化を損なう可能性もあるため注意

● 中堅〜大企業
・等級制度(グレード)・報酬制度(賃金テーブル)との整合が必須 ・部署間の公平性を担保するため、相対評価を取り入れるケースが多い ・管理職と一般社員で評価制度を分ける企業も多く、専門職制度との整合も重要

このように、規模が大きくなるほど「評価のバラつき」や「公平性」が問題になり、 相対評価の導入・評価分布の管理を求められる傾向が強まります。

人材ポートフォリオ(職種・世代・雇用形態)の観点

同じ評価項目・同じウエイトで全社員を評価することは、実はかなり難易度が高い取り組みです。 そのため、多くの企業では「人材ポートフォリオに応じて評価軸やウエイトを変える」手法を取り入れています。

● 管理職:組織成果・育成・マネジメントのウエイトを高める
・組織目標の達成度 ・メンバー育成(1on1・フィードバック) ・組織運営(生産性、残業管理、離職率) など、個人の成果より「組織の成果」が評価の中心になります。

● 専門職(エンジニア・デザイナーなど):専門スキルと成果物の質を重視
・技術スキルの向上 ・成果物の品質 ・専門性を活かした提案・改善 など、定量化しにくいが重要なポイントが多く、絶対評価と相性が良い領域です。

● 若手育成層:成長度・プロセス評価の重要性が高い
若手の場合、経験値が少ないため成果差が出やすく、相対評価では不利になりやすいという課題があります。 そのため、「プロセス・成長度」の評価軸を厚めに設計することが必須です。

多様な人材が働く組織では、単一の評価制度に全員を当てはめようとすると、 「公平に見えて実は不公平」という状態に陥ることがあります。 自社の人材構成に合わせて、評価軸・指標・ウエイトを柔軟に設計することが重要です。

絶対評価×相対評価を組み合わせた評価制度の設計パターン

基本パターン①|一次・二次評価は絶対評価、最終調整で相対評価

最も導入しやすい組み合わせパターンが、「一次・二次評価は絶対評価、最終の三次評価で相対的な分布調整を行う」方法です。 田辺コンサルティングなどでも推奨される運用で、現場の評価者は絶対評価に基づいてしっかり個人を見ます。そのうえで三次評価者(経営層・管理部門)が、部門間のバラつきや評価の甘辛をチェックします。

● このパターンのポイント

  • 個人の努力・成長を正しく見られる(絶対評価)
  • 部門ごとの評価の「甘辛差」を補正できる(相対評価)
  • 順位に機械的に当てはめず、「整合性チェック」目的で使うことが重要

このアプローチは、評価の公平性と納得感を両立させやすく、最も現実的かつ多くの企業で採用されている組み合わせといえます。

基本パターン②|人事評価は相対評価、賞与・昇給は絶対評価で補正

次に、「人事評価(ランク)は相対評価で行い、最終的な賞与・昇給の決定は絶対評価で補正する」方法があります。 社会保険労務士法人ONE HEARTなどでも紹介されている実務的なやり方で、人件費コントロールと社員の納得感の両立に効果があります。

● このパターンの特徴

  • 人事評価は相対評価で分布管理しやすい
  • 賞与・昇給では絶対評価(目標達成度)を用い「成果に報いる」感覚を担保
  • モチベーション低下を防ぎつつ、コスト管理も実現可能

相対評価でランクが決まっても、賞与テーブルで絶対評価の要素(達成率など)を加味することで、 社員から「頑張ったのに報われない」という不満を抑えられる設計です。

職種別・等級別に評価手法を変えるアプローチ

同じ評価制度であっても、職種・役割・等級によって評価手法のウエイトを変える設計も非常に有効です。 業務内容や成果の性質が異なるため、単一の基準では不公平になりやすいためです。

● 主な例

  • 営業職:成果の比較がしやすく、相対評価がインセンティブとして機能しやすい
  • 技術職・クリエイティブ職:プロセスや専門性を重視するため、絶対評価の比重を高める
  • 管理職:「組織成果・メンバー育成・マネジメント力」を評価軸とする絶対評価が中心

このように、職種や等級ごとにメリハリをつけた評価方式を採用することで、より公平で納得感のある制度運用が可能になります。

評価結果を処遇・育成に反映するルールを明文化する

評価制度の価値を最大化するためには、「評価結果をどう処遇・育成につなげるか」を明確にルール化することが欠かせません。 評価と処遇・キャリアのつながりが曖昧なままでは、どれほど制度を整えても社員の納得感は生まれません。

● 明文化すべきポイント

  • 評価ランクごとの昇給幅・賞与水準
  • 評価結果と研修・ローテーション配置の連動
  • 評価ランクとキャリアパス・スキルマップの関係性

評価制度の最終目的は「組織の成果向上」と「社員の成長促進」です。 そのためには、評価 → 処遇 → 育成 → キャリア形成へとつながる導線を制度として組み込むことが必須となります。

公平性と納得感を高める評価制度設計のステップ

ステップ1|目的・方針・評価コンセプトを言語化する

評価制度設計の最初のステップは、「何のための評価制度なのか」を明確にすることです。 経営・人事の双方で目的を合意しないまま制度を作り始めると、評価項目がバラバラになり、制度が形骸化する原因になります。

● 目的の例

  • 業績連動を強めたい(成果重視)
  • 社員の成長支援を重視したい(育成重視)
  • コンプライアンス遵守・リスク管理を重視したい

どれを優先するかで評価項目・ウエイト・評価基準の設計が大きく変わります。 まずは「評価コンセプト」を文章として定義し、制度設計全体の指針とすることが重要です。

ステップ2|等級・役割・職種ごとの評価項目・ウエイトを設計

次に、役割や職種に応じて評価項目とウエイトを設計します。 すべての社員を同じ軸で評価することは非現実的であり、公平性を損なう原因になります。

● 成果(What)と行動・プロセス(How)のバランスが鍵

  • 成果:売上、KPI達成度、プロジェクト完遂など
  • 行動・プロセス:協働性、課題解決力、顧客志向など

ジョブ型・メンバーシップ型いずれの場合も、「成果だけ」「行動だけ」に偏らないように設計することがポイントです。 職種別にウエイトを変えることも、公平性と納得感の向上につながります。

ステップ3|評価基準(グレード定義)を具体化する

評価制度の公平性は、評価基準の具体性によって大きく左右されます。 「期待通り」「期待を超える」など抽象的な言葉だけでは、評価者によって解釈が異なり、バラつきが発生します。

● 具体化すべきポイント

  • 「どのレベルならB評価か」を行動事例で定義する
  • 定性的項目は行動例・アウトプット例をセットで記載する
  • コンピテンシー項目は段階ごとの行動を明文化する

たとえば「課題解決力」を評価する場合、 「自ら課題を発見し、他部署を巻き込んで解決に導いた」など具体的な事例を基準として示すことで、 評価者・被評価者双方の認識を揃えることができます。

ステップ4|評価者トレーニングとキャリブレーション(すり合わせ)

制度をいくら整えても、評価者の理解と運用レベルが揃わなければ公平性は実現しません。 そのため、評価者トレーニングとキャリブレーション(評価すり合わせ)は不可欠です。

● 実施すべき取り組み

  • 評価者研修:ケーススタディ、ロールプレイ、評価理由説明の練習
  • 評価会議:評価分布の確認、評価理由の共有、甘辛の調整
  • 評価者ガイドラインの整備:基準の読み解き方・注意点

これらのプロセスを通じて、評価者間の「物差しのズレ」を最小限に抑えることができます。

ステップ5|フィードバックと1on1・育成計画への接続

評価制度は「結果をつけること」が目的ではなく、社員の成長と組織の成果向上につなげることが本質です。 そのためには、評価結果をフィードバックし、1on1や育成計画に結びつける仕組みが欠かせません。

● フィードバック面談で重視すべき流れ

  • 事実の共有(何が起きたか)
  • 解釈の整理(なぜそうなったのか)
  • アクション提案(次に何に取り組むか)

評価結果をもとに、次期目標の設定・スキル開発・配置検討など、人材育成の流れをつくることが重要です。 評価 → フィードバック → 目標設定 → 育成施策というサイクルを回すことで、評価制度が成長支援ツールとして機能し始めます。

人事DX・タレントマネジメントと連動した評価制度運用

評価データを「人材データベース」として活用する視点

現代の評価制度運用では、評価結果を「査定に使うだけ」で終わらせず、人材データベース(人材DB)として活用することが求められています。 プラスアルファ・コンサルティングのようなタレントマネジメント基盤では、評価データ・スキル情報・異動履歴・キャリア志向を統合管理し、 人材ポートフォリオ分析や戦略的人材配置に活かす運用が一般化しています。

● 活用できる主な領域

  • 配置・異動(適材適所の判断精度向上)
  • 登用(管理職候補の抽出)
  • 後継者計画(サクセッションプランニング)
  • リスキリング・育成計画(不足スキルの可視化)

評価データを点ではなく線として蓄積し可視化することで、タレントマネジメントそのものの質が向上します。

人事評価システム・HRテック活用による運用効率化

評価制度を適切に運用するためには、紙・Excelからクラウド型の人事評価システムへ移行することが極めて効果的です。 カオナビをはじめとしたHRテックでは、評価運用の負荷を大幅に削減でき、人事・評価者双方の工数を削減できます。

● クラウド移行の主要メリット

  • 評価の集計・分布確認が自動化
  • ワークフローで評価提出の抜け漏れがゼロに
  • リマインド通知で期限遅延を防ぐ
  • ログ管理で評価の透明性が向上
  • 部門ごとの評価傾向(甘辛)の可視化

クラウド活用により、評価者・人事担当者の負荷は劇的に軽減され、 「制度の設計・対話・フィードバック」といった本質的な業務に集中できる環境が生まれます。

人的資本開示・ガバナンスの観点から見た評価制度

人的資本経営が求められる現代において、評価制度はガバナンスの中核となっています。 人的資本開示の流れによって、評価制度の公平性・透明性への説明責任が高まっています。

● 重要となる連動ポイント

  • 人的資本KPI(エンゲージメント、育成投資、離職率など)と評価指標の紐づけ
  • 評価基準の明示・妥当性を示す説明責任
  • 意思決定プロセスの可視化によるガバナンス強化
  • 社外への開示要請(人的資本開示制度)への対応

今後は、評価制度そのものが企業価値の重要な開示情報として扱われる時代。 だからこそ、評価データ管理・評価プロセスの透明化・HRテック活用は、人事DXと不可分のテーマになっています。

まとめ|絶対評価・相対評価を正しく設計し、自社に最適な評価制度を構築する

絶対評価と相対評価は、それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。重要なのは「どちらが正しいか」ではなく、自社の目的・人材ポートフォリオ・業種特性に合わせて最適な組み合わせを選ぶことです。 絶対評価は個々の成長や納得感を高めやすい一方、基準設計が難しく、評価が甘くなりやすい傾向があります。相対評価は分布管理・人件費コントロールに優れますが、競争過多や説明困難といったリスクがあります。 そのため、多くの企業で「一次・二次は絶対評価、最終調整に相対評価を使う」など、両者を組み合わせたハイブリッド型が最適解となりつつあります。

また、評価制度は作って終わりではなく、評価者トレーニング・キャリブレーション・1on1と育成の連動が不可欠です。さらに、クラウド型の人事評価システムを活用することで、データの一元管理や人事DXによる運用効率化が進み、人的資本開示にも対応できます。 公平性と納得感が高い評価制度は、社員の成長を促し、組織パフォーマンスを最大化します。自社に最適な評価制度づくりに向けて、まずは現状の課題整理と目的設定から着手することをおすすめします。

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