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戦略人事とは?経営戦略と人材をつなぐ実行手順・機能・落とし穴まで徹底解説

市場変化が激しい今、経営戦略と人材戦略を“つなげて実行する”戦略人事が競争優位の鍵です。従来の人事が担ってきた労務や制度運用に加え、事業目標から逆算した人材の採用・育成・配置・評価を主導する役割が求められています。人的資本の情報開示やDX、人手不足の深刻化は、人材ポートフォリオの最適化とデータドリブンな意思決定を迫ります。本記事では、戦略人事の定義と背景、HRBP/OD・TD/CoE/OPSの4機能、タレントマネジメントやOKRなどの実務論、KPI設計・具体ステップ・失敗しやすい落とし穴まで、専門家視点で体系的に解説します。参考記事の知見を土台に、読者がすぐ現場に落とし込める実行可能なフレームを提示します。

戦略人事とは:定義・目的・「人事戦略」との違い(SHRM)

定義——経営戦略の実現を目的に、人材面から課題を解決・変革を推進

戦略人事とは、経営資源の中でも最も重要な「ヒト」を軸に、経営戦略の実現を目的として人材面から課題を解決・変革を推進する考え方です。単なる人事業務の効率化ではなく、事業成長を支える“攻めの人事”として経営と一体で機能する点が特徴です。

人事戦略との違い——オペレーションの改善に留まらず、競争優位の創出にコミット

一般的な人事戦略が採用や制度改革など「内部改善」に焦点を当てるのに対し、戦略人事は経営戦略と連動して「市場競争での優位性」を創出することを目的とします。経営戦略の成果を左右する重要な推進力として、人事が自ら事業に踏み込み、経営課題を人材の力で解決します。

SHRMの位置づけと歴史的背景(略史・概念整理)

戦略人事は学術的には「SHRM(Strategic Human Resource Management)」として体系化され、1980年代以降にアメリカで発展しました。日本では、人的資本経営やタレントマネジメントの流れとともに注目が高まっています。SHRMは「経営戦略を達成するための人的資源活用フレーム」として、経営学・組織論の両面から研究・実務化が進んでいます。

戦略人事が注目される背景:人的資本経営・DX・人手不足

人的資本開示・投資家期待の高まり(開示の狙いと実務インパクト)

人的資本の情報開示が義務化され、投資家や市場からの注目が一気に高まりました。企業価値の源泉が「モノ」や「設備」から「人材」へとシフトする中、人的資本経営の重要性が増しています。開示の目的は単なる報告ではなく、企業が人材戦略をどのように経営戦略と結びつけているかを示すことです。戦略人事は、この開示対応を超えて「人材投資=企業成長戦略」として再設計する役割を担います。

DXと事業ポートフォリオ転換——スキル移行(リスキリング)の必然

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、既存事業の構造転換や新規事業の立ち上げが加速しています。その過程で求められるのが、社員のスキル移行=リスキリングです。新たなビジネスモデルに対応するためには、IT・データ分析・AIなどの専門スキルだけでなく、変化に適応できる思考力やコミュニケーション力も必要です。戦略人事は、こうしたスキルギャップを見極め、経営戦略に即した育成・配置計画を設計します。

人手不足・高齢化と定年延長・シニア活躍設計

日本では少子高齢化により労働人口が減少し、企業は深刻な人手不足に直面しています。そのため、経験豊富なシニア層の活躍推進や定年延長が急務です。改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの雇用確保が努力義務化され、戦略人事にはシニア人材のモチベーション維持・役割設計・報酬見直しなど、制度面の再構築が求められます。多様な世代が共存し、知見を活かせる組織設計こそが、持続可能な経営基盤となります。

戦略人事の4機能:HRBP/OD・TD/CoE/OPSの役割

HRBP——事業の“右腕”、目標から逆算する人材・組織課題設計

HRBP(HR Business Partner)は、事業戦略の実現を目的に、経営層や事業責任者のパートナーとして人と組織の側面から課題を解決する役割を担います。単なる人事窓口ではなく、事業部門の「右腕」として、目標達成に必要な人材要件や組織体制を設計・推進するのが特徴です。経営戦略を理解し、「どのような人材が、いつまでに、どのポジションで活躍すべきか」を逆算的に構築できるかが鍵となります。

OD・TD——組織開発と人材開発の両輪(心理的安全性、1on1、サクセッション)

OD(Organization Development:組織開発)とTD(Talent Development:人材開発)は、戦略人事における「人と組織を育てる」中核機能です。ODでは、ビジョン浸透やチームの心理的安全性の向上、部門横断プロジェクトの促進など、組織文化や風土を整えます。一方、TDでは、1on1ミーティングや次世代リーダーの選抜育成(サクセッションプランニング)などを通じて、人材の能力開発を体系的に進めます。両者を連動させることで、組織全体のパフォーマンス向上を支援します。

CoE——評価・報酬・採用・人事システム等の専門設計

CoE(Center of Excellence)は、人事領域の専門知見を集約した「専門設計チーム」です。評価制度、報酬制度、採用フロー、研修体系、人事システムなどを設計・最適化し、HRBPや現場部門の実行を支援します。各制度やプロセスを標準化しながらも、自社の戦略に合わせてカスタマイズするのがポイントです。CoEが社内の人事知見を体系化することで、全社的な人事品質と一貫性が高まります。

OPS——定型業務の標準化・BPO/シェアード化とガバナンス

OPS(Operations)は、採用や労務、勤怠管理などのオペレーション領域を担当し、定型業務の標準化・効率化を推進します。特に、給与計算や入退社管理などの定常業務をBPO(業務委託)やシェアードサービスセンター化することで、コスト削減と品質維持を両立します。OPSが安定した基盤を築くことで、HRBPやCoEはより戦略的な活動に集中でき、全体のガバナンス強化にもつながります。

分業と連携の設計図(責任分界・RACIの基本)

これら4機能は独立して存在するのではなく、連携によって最大の効果を発揮します。そのためには、役割分担と責任範囲を明確化するRACIモデル(Responsible/Accountable/Consulted/Informed)の設計が重要です。たとえば、採用においてはHRBPが要件定義、CoEが採用設計、OPSが実務運用、OD・TDが入社後育成を担う、といった形で明確な分業が求められます。これにより、重複や属人化を防ぎ、戦略と実務の連動性を高めることができます。

経営と人事を“翻訳”する方法:KGI/KPI/OKRで一貫性を担保

経営KGI→人事KPIのブレイクダウン手順(例:売上2倍→必要HC・スキル)

戦略人事の核心は、経営戦略を人事施策に“翻訳”する力にあります。たとえば「3年で売上を2倍にする」というKGI(最終目標)がある場合、人事部門はそこから逆算して「どの職種を、いつまでに、どのスキルレベルで、何人確保する必要があるか」を定義します。
このブレイクダウンを具体的な人事KPI(採用充足率・育成進捗・離職率など)に落とし込み、経営数値と連動させることで、人材戦略と事業成果の一貫性を確保します。

OKRの使いどころ(行動変容を促す定性的目標と主要成果)

OKR(Objectives and Key Results)は、経営戦略の実現に必要な“行動変容”を引き出すツールです。数字を追うKPIと異なり、OKRは「どんな姿勢・行動で成果を生み出すか」という定性的な目標(Objective)を設定し、その成果を測る定量指標(Key Results)を紐づけます。
たとえばObjectiveを「顧客起点の営業文化を育てる」とし、Key Resultsを「商談前リサーチ実施率90%」「顧客満足スコア+1.0」などと設定することで、行動の質を高め、組織変革を促進します。

人材ポートフォリオ設計(新規開拓 vs 既存深耕で要件が変わる)

経営戦略によって求められる人材像は大きく異なります。たとえば「新規市場開拓」を重視するフェーズでは、スピード感・チャレンジ精神・外部交渉力を持つ人材が必要です。一方「既存市場深耕」では、関係構築力・継続改善力・顧客理解力が重視されます。
このように、事業ポートフォリオに応じて人材要件をマッピングし、採用・育成・配置計画を策定することが、戦略人事における“人材ポートフォリオ設計”です。

地図(戦略)とルート(人の動かし方)を結ぶ“翻訳”シート例

経営戦略=地図、人材戦略=ルートと捉えると、両者をつなぐ“翻訳シート”を設けると効果的です。
たとえば以下のようなフォーマットで整理します:

  • 経営目標(KGI): 売上2倍/新市場参入/顧客満足度向上
  • 人材課題: DX人材不足/営業リーダー層の育成/エンゲージメント低下
  • 人事KPI: 採用充足率95%/育成完了率80%/離職率5%以下
  • OKR: 「自走するチーム文化を醸成する」→ チームOKR浸透率90%

このように、経営数値と人事施策を一枚で紐づけて可視化することで、「なぜこの施策をやるのか」「どの成果に貢献するのか」が明確になり、経営層・現場・人事のベクトルを一致させることができます。

評価項目の設計:行動特性と階層別の例

領域例(課題発見/課題遂行/人材活用/コミュニケーション)

評価項目を設計する際は、業種や職種に関わらず汎用的に使える「行動領域」を設定すると評価の一貫性が高まります。代表的な4つの領域は以下の通りです。

  • 課題発見: 変化を読み取り、潜在的な問題を構造的に捉える力
  • 課題遂行: 計画を立て、粘り強く目標達成に向けて行動する力
  • 人材活用: メンバーの特性を理解し、強みを活かしてチーム成果を出す力
  • コミュニケーション: 相手の立場を踏まえ、建設的な対話や調整を行う力

これらは「コンピテンシー評価」の核となる領域であり、行動観察を通じて測定可能な項目として具体化していくことが重要です。

一般~中堅向け設問例(5段階・観察可能行動/曖昧語の排除)

一般職~中堅社員の評価項目は、抽象的な表現を避け、「観察できる行動」を基準に設定します。曖昧な表現(例:「意欲的に」「積極的に」など)を排除し、具体的行動で評価できるようにします。

  • 【課題発見】業務上の課題を構造的に整理し、改善提案を行っている
  • 【課題遂行】期限を守り、目標に向けて自ら行動計画を立てて実行している
  • 【人材活用】チーム内で他者の強みを理解し、適切に業務を分担している
  • 【コミュニケーション】相手の意見を尊重し、論理的に自分の考えを伝えている

各項目は5段階(1=ほとんどできていない~5=常に実践できている)で評価し、定性的コメントも併記できるように設計します。

管理職向け設問例(ビジョン提示/心理的安全性/公正なFB)

管理職層では、成果責任とともに「組織成果を生み出すリーダーシップ行動」が問われます。以下のような項目が有効です。

  • 【ビジョン提示】チームの方向性を明確に示し、メンバーを巻き込んで行動を促している
  • 【心理的安全性】メンバーの意見を受け止め、否定せずに改善につなげている
  • 【公正なフィードバック】事実に基づき、評価理由を具体的に伝えている
  • 【人材育成】部下の成長段階に応じて支援・権限委譲を行っている

管理職評価は、個人実績だけでなく「チームを通じて成果を出す力」を測る項目設計がポイントです。

設問の検証(トライアル30名/上限・下限天井化の検出)

設問設計後は、評価実施前にトライアル(パイロット)を行い、信頼性を検証します。目安として30名程度のサンプルで評価を実施し、回答のばらつきや項目の「上限・下限天井化」を確認します。スコアが極端に偏る設問は、評価基準が曖昧または難易度が不適切である可能性があります。
また、相関分析を行い、評価項目間で重複している項目(多重共線)を特定・削除することで、より精緻な評価設計が可能になります。

導入ステップ:目的定義→設計→トライアル→本番→フィードバック

①目的と扱いの宣言(育成目的/査定とは切り分け)

導入の第一歩は、「本施策の目的」を明確に宣言することです。特に重要なのは、評価や360度フィードバックを「査定目的」ではなく、育成目的として扱うことを明示することです。これにより、受け手が防衛的にならず、前向きに自己改善へ活かす姿勢が生まれます。経営層・管理職・従業員の全員がこの意図を理解し、目的の認識を共有することがスムーズな導入の鍵です。

②対象・回答者・人数設計(6–8名を目安/接点の多い観察者)

対象者と回答者の設計では、「誰が誰を評価するか」の関係性を明確に定義します。一般的には、上司・同僚・部下・自己評価を含む6〜8名程度が妥当なサンプル数です。重要なのは、評価対象者と日常的に接点の多い観察者を選ぶこと。関係性が薄いと、形式的な回答やバイアスが生じやすくなります。また、回答者に対しては「評価の目的」「回答の守秘性」も事前に周知しておきましょう。

③設問・匿名性・スケジュール設計(運用Q&A・問い合わせ導線)

設問設計では、回答者が短時間で理解し回答できるよう、質問文は平易で具体的にします。
匿名性の確保も重要で、個人が特定されない回答形式(集計・コメント加工など)を選択します。また、実施スケジュールは評価業務や繁忙期と重ならないように設定し、運用Q&Aページや問い合わせ窓口を用意しておくとトラブルを防げます。

④トライアル運用と改善(集計性・理解度・負荷の確認)

本番前に、小規模トライアルを実施し、アンケートツールの動作、集計の容易さ、回答者の理解度を確認します。回答に時間がかかりすぎる設問や、曖昧に解釈されやすい設問がある場合は修正を行いましょう。
また、回答者・被評価者の双方から簡単なフィードバックを取り、負荷感や心理的ハードルが高すぎないかをチェックします。

⑤本番実施と返却会(1on1/グループ)の標準化

本番運用では、結果の返却プロセスが最も重要です。返却会(1on1またはグループ形式)を標準化し、結果を「評価」ではなく「対話」として扱う場を設けます。上司が一方的に伝えるのではなく、被評価者自身が結果を振り返り、気づきを共有する時間を確保しましょう。心理的安全性を意識した進行ガイドを作成しておくと効果的です。

⑥アクションプラン化(90日行動計画・再測定)

フィードバックを受けた後は、気づきを次の行動に落とし込むことが重要です。90日行動計画を設定し、「何を・いつまでに・どのように実践するか」を明文化します。一定期間後(例:3か月~半年)に再測定を行うことで、行動変化や成果の定着度を検証できます。
このサイクルを定常化することで、単発イベントではなく、組織全体の育成PDCAとして運用することが可能になります。

フィードバック設計:結果で終わらせない

レポートの読み方教育(乖離の解釈/強み×弱みマップ)

フィードバックの価値を最大化するには、受け手が「結果をどう解釈し、次の行動に活かすか」を理解している必要があります。単にスコアを見るだけでなく、自己評価と他者評価の乖離を客観的に捉える力を養いましょう。
特に、強みと弱みをマッピングした「強み×弱みマップ」は有効です。自分では気づきにくい長所や、改善すべき行動傾向を視覚的に把握でき、納得度の高い成長テーマ設定につながります。

1on1での合意形成(行動目標・測定指標・期日)

結果返却後の1on1は、評価の説明ではなく行動変容の起点として位置づけます。上司と被評価者が対話し、以下の3点を合意形成することが重要です。

  • 行動目標: 具体的に何を改善・強化するか
  • 測定指標: 成果や行動をどのように確認するか
  • 期日: いつまでに実践するか(90日などの期限を設定)

この3点をシートやシステムに記録し、定期的に振り返ることで、行動計画が「やりっぱなし」にならず定着します。

グループFBの効能(相互学習・他流試合・内省の深化)

個別1on1に加え、グループフィードバック(グループFB)を取り入れることで、組織全体の学習効果が高まります。複数名が互いの結果や気づきを共有することで、相互学習・他流試合・内省の深化が促されます。
「自分だけが課題を抱えているわけではない」と実感できる心理的効果もあり、前向きな改善意欲を醸成します。進行役(ファシリテーター)を立て、安心して発言できるルールを設けると効果的です。

再評価の頻度(年1–2回の健康診断的位置づけ)

フィードバックは一度きりではなく、定期的に再評価する「健康診断」のような仕組みにすることで継続的な成長が促進されます。年1〜2回のサイクルで実施し、前回からの行動変化や成果を比較することで、成長の可視化とモチベーション維持につながります。
また、再評価データを蓄積・分析することで、個人単位だけでなく組織全体の成長トレンドを把握でき、人材育成戦略の精度も高まります。

評価者・被評価者の研修:目線合わせと心理的安全性

評価目的/匿名性/表現例の共有(攻撃的記述の回避)

評価制度を効果的に運用するためには、まず評価者と被評価者の目線合わせが欠かせません。特に重要なのは、評価の目的を「査定」ではなく「育成」に置くこと、そして匿名性や守秘性を明確にすることです。
また、自由記述欄では攻撃的・感情的な表現を避け、建設的なフィードバックに統一する必要があります。たとえば「○○ができていない」ではなく、「○○を改善するとより成果が出やすい」といった前向きな表現へ置き換えるトレーニングを実施します。

バイアス学習(近接・後光・対比・寛大/厳格)

評価者研修では、誰にでも起こりうる認知バイアスの理解が重要です。代表的なものには以下があります。

  • 近接効果: 直近の出来事ばかり印象に残る
  • 後光効果: 一つの長所(または短所)で全体評価を歪める
  • 対比効果: 他者との比較で評価が変動する
  • 寛大・厳格効果: 評価者の性格や関係性に左右される

これらのバイアスを理解した上で、評価の客観性を担保することが求められます。研修では、実際の評価シナリオを用いてロールプレイ形式でバイアスの影響を体感し、正しい評価プロセスを習得します。

フィードバックを受ける力(受容→内省→行動化)

被評価者に対しても、フィードバックを「受け止め、内省し、行動に移す」スキルを育てることが重要です。これを受容→内省→行動化の3段階で整理します。

  1. 受容: 感情的反発ではなく、相手の意図を理解する姿勢を持つ
  2. 内省: 自分の行動や結果を客観的に振り返り、改善点を明確化する
  3. 行動化: フィードバックをもとに具体的な行動を設定し、実践する

このサイクルを意識することで、フィードバックが単なる評価結果ではなく、成長の触媒として機能します。研修では、対話型のワークショップや1on1ロールプレイを通じて、心理的安全性の高いフィードバック文化を育成します。

ツール選定の基準とチェックリスト

測定内容の妥当性(対象適合・観察可能性・客観性)

ツール選定で最初に確認すべきは、測定内容の妥当性です。評価項目や設問が自社の対象層(一般職・管理職など)に適しているか、行動が実際に観察可能か、主観に偏らない客観性が担保されているかを確認します。
また、評価項目が抽象的すぎると運用が形骸化するため、職務や業務実態に即した行動指標を持つツールを選ぶことが重要です。

品質・信頼性(重複項目防止・標準得点の実績・操作性)

ツールの品質を判断するうえでは、データの信頼性操作性が重要です。
設問の重複や曖昧な表現がないかを確認し、標準得点(偏差値・基準スコア)などの統計的実績があるかをチェックしましょう。操作画面や回答UIが直感的でわかりやすいほど、回答精度が上がり、現場負荷も軽減されます。
さらに、導入企業数や学術的根拠など、エビデンスが明示されているかも信頼性の指標になります。

施策設計力・支援力(返却会・コーチング・運用伴走)

ツールは導入して終わりではなく、結果をどのように活用できるかが鍵です。
データ返却の仕組み(個人レポート/組織分析レポート)や、返却会・コーチング・運用伴走などのサポート体制を持つベンダーを選定しましょう。
フィードバックの設計や分析支援を含めた「施策設計力」が高い企業ほど、現場への浸透・定着がスムーズになります。

運用コスト(配布~回収~集計~返却の自動化範囲)

ツール選定では、費用だけでなく運用負荷と自動化範囲のバランスを確認することが大切です。
配布・回収・集計・返却といったプロセスがどこまで自動化されているかにより、担当者の工数が大きく変わります。API連携やシングルサインオン対応など、既存システムとの接続性もチェック項目に入れましょう。
初期費用が高くても、長期的に見れば運用効率で回収できるケースも多いため、総コストで比較する視点が重要です。

比較チェックリスト(必須/望ましい要件、RFP項目例)

最終的な選定時には、複数ツールを客観的に比較できるチェックリストを用意します。
以下は一例です。

項目分類チェック内容評価
必須要件評価項目の妥当性・匿名性の担保・標準得点の実績◎/○/△
望ましい要件ダッシュボード分析機能・返却会支援・多言語対応◎/○/△
RFP項目例操作画面のUI確認・導入サポート・運用マニュアルの有無◎/○/△

このように定量・定性両面で比較することで、自社の評価方針や運用体制に最も適したツールを選定できます。

まとめ|戦略人事を実現するために必要な視点と実践ステップ

経営戦略の実現に直結する「戦略人事」は、単なる制度設計や評価運用を超え、経営と人材をつなぐ推進力として企業価値を高める要の領域です。
本記事で解説したように、まずは経営目標から逆算した人材戦略の設計(KGI・KPI・OKRの連動)、次に妥当な評価項目と運用プロセスの整備、そして最後にフィードバックや研修を通じた「行動変容の定着」が欠かせません。
加えて、ツール選定やデータ活用も“手段”として位置づけ、人的資本経営の文脈で継続的に改善を図ることが求められます。
戦略人事の本質は、「仕組み」ではなく「人の成長と組織の進化」を同時にデザインすること。
ぜひ本記事を参考に、自社に適した形で戦略人事を構築し、経営と人事が一体となった持続的な成長の仕組みを実現してください。

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